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共有名義の不動産を円満に売却するコツとトラブル対策

共有名義の不動産を売却するための方法や、トラブル回避のコツなどを詳しく解説します。
共有名義の不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。

すべての共有者が売却に納得し、全員が売主となることで、単独名義の不動産と同様にスムーズに手続きを進めることができます。

ただし、共有者間で意見が異なることも多いのが現状です。

特に売却のタイミングや価格、条件に関しては意見がまとまりにくく、これが原因で共有者同士の関係が悪化したり、思わぬトラブルを招いたりする可能性もあります。

そこで本記事では、共有名義の不動産を円満に売却するための方法や、注意すべきポイント、そしてトラブルを回避するためのアドバイスをご紹介します。

「共有者との意見の食い違いで、売却が進まない…」そんな悩みを抱えている方、必見です!

共有名義の不動産とは?

共有名義の不動産とは、ひとつの不動産を複数人で共同所有している状態を指します。

例えば、相続やマイホームの購入などきっかけに、家族や親族と不動産を共有するケースがよくあります。このような共有名義の不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。

しかし実際には、共有者同士の意見の食い違いや手続き上の不備などから、思わぬトラブルに発展してしまうことも少なくありません。

そのため、共有不動産を円満に売却するためには、事前に必要な知識を身につけ、冷静かつ丁寧に手続きを進めることが大切です。

では、具体的にどのような流れで売却を進めればよいのでしょうか?
注意すべきポイントや進め方について、早速確認していきましょう。

共有名義不動産の基礎知識

土地や建物などの不動産は、相続や住宅の購入をきっかけに、複数人で所有する「共有名義」になることがあります。

▼共有名義不動産を持つ主な状況
・相続によって、ひとつの不動産を複数の相続人が共同で受け継ぐ場合
・マイホームを購入する際に、夫婦で共有名義にする場合
・二世帯住宅を建てる際に、親子で共同名義にする場合

共有名義不動産では、それぞれの共有者が「共有持分」と呼ばれる持ち分を所有しており、その持分ごとに登記することができます。

また、共有者が不動産全体に関してできることには制限があり、行おうとする内容によっては、他の共有者の同意が必要になる場合があります。

不動産全体の保存・使用 → 単独で可能

建物の修繕や、不法占拠者の排除といった「保存行為」にあたるものは、共有者が単独で行うことが可能です。また、共有持分を持つ者には、自分の持ち分だけでなく、不動産全体を使用する権利が認められています。そのため、共有者のうち一人だけがその不動産に住んでいても、法律上は問題ありません。

ただし、そのように他の共有者が使用できない状況が続く場合は、居住している共有者が「使用料(利用に対する対価)」を他の共有者に支払うのが一般的です。

管理・改良 → 過半数の同意が必要

物件のリフォーム(改良)や賃貸などの管理行為を行うには、共有持分の過半数の同意が必要です。

不動産全体の処分・変更 → 全員の同意が必要

共有名義の不動産を丸ごと売却する場合や、抵当権を設定する場合には、原則として共有者(名義人)全員の同意が必要です。

持分だけの売却 → 単独で可能

自分の共有持分だけを売却する場合には、法律上、他の共有者の同意や事前の通知は必要ありません。
しかし、持分だけの売却は共有者間の信頼関係を損なうリスクがあります。そのためできる限り、持分売却を検討する段階で他の共有者とよく話し合い、合意を得てから進めるのが望ましいです。

共有名義不動産の売却は可能か?

共有名義の不動産を売却することは可能です。

しかし、単独名義の不動産に比べて手続きが複雑で、時間や労力がかかります。

まずは、共有名義不動産を売却するにはどのような方法があるのか、自分にとって最適な手段を判断するために、代表的な売却パターンを確認していきましょう。

共有者全員の同意を得て売却する方法

共有名義の不動産を売却する際の、もっとも基本で確実な方法は、共有者全員の同意を得て売却することです。

この方法であれば、全員が売主となり、不動産全体をまとめて売却できるため、通常の不動産売却と同じ流れで手続きを進められます。

ただし、共有者の人数が多い場合は、意見の調整やスケジュールのすり合わせに時間や労力がかかることもあるため、その点には注意が必要です。

なお、繰り返しになりますが、共有者の同意がなければ勝手に不動産全体を売却することはできません。

この点は共有名義の不動産における大前提として、しっかり押さえておきましょう。

共有持分のみを売却する方法

共有名義不動産であっても、自分の持分だけであれば、他の共有者の同意なしで売却が可能です。

ただし、次のような課題もあります。

  • 買い手が見つかりにくい
  • 売却価格が割安になりやすい
  • 同意なしに売却した場合は、共有者との関係が悪化するリスクあり

そのため、自分の共有持分を他の共有者へ売却する方法が現実的と言えます。

他の共有者の持分を一人が買い取りすれば、買い取った共有者はすべての持分を取得することとなり、その後は単独名義の不動産としての活用はもちろん、自由に売却もできます。

《リースバックを検討する》

共有者の1人が現在の家(共有不動産)に住んでいるため売却に反対している、というような状況では「リースバック」という方法もあります。

リースバックとは、一度不動産会社に物件を売却し、その後に賃貸契約を結んで家賃を支払いながら住み続ける仕組みです。

住み慣れた家を手放すことなく、売却を進められるというメリットがあります。

ただし、所有権が第三者に渡ることで、家の使用方法や自由度に制限がかかる可能性もある点は注意が必要です。

例えば、賃貸契約による規約や制限が新たに加わる他、将来的に物件を買い戻す際には、条件が変わることも考えられます。

《分筆を検討する》

対象の不動産が土地のみである場合、状況によっては「分筆(ぶんぴつ)」という手続きを行い、共有状態の土地を物理的に分けて、自分の持分を単独名義の土地として切り出すことが可能です。

分筆して持分を明確に分けることで、他の共有者の同意を得ずに、自分の単独名義となった部分だけを売却することができるようになります。

ただし、分筆が認められるかどうかは土地の形状や面積、接道条件などによって異なり、必ずしもすべての共有土地で実現できるわけではありません。

また、分筆には測量や登記変更などの費用と手間がかかるため、事前に専門家(測量士や不動産会社)に相談することをおすすめします。

司法手続きを経て売却する方法

共有者間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「共有物分割訴訟」を申し立てるという方法があります。

この訴訟を通じて、裁判所の判断により不動産を物理的に分割したり、売却して代金を分配したりといった形で問題が解決されます。

「裁判」と聞くと少し大げさに感じるかもしれませんが、合意が得られない状況で共有状態を解消する最後の手段として覚えておきましょう。

第三者への売却の難易度

法律上は第三者に対しても自由に売却可能です。

しかし、第三者が共有持分だけを購入した場合は、次のような問題が発生します。

  • 不動産全体を自由に使えない
  • 他の共有者とのトラブルリスクが高い

第三者による買い手が現れにくいという現状があることから、共有持分だけを売却する場合、他の共有者が買い手となることが多いです。

唯一、共有持分を積極的に購入する第三者は、主に「共有持分買取業者」という専門業者です。

これらの業者を利用すると、相場よりも安い価格での売却になるものの、早期に現金化することが可能です。

ただし、業者の目的は、買い取った共有持分を他の共有者に転売したり、不動産全体を最終的に取得したりすることです。

このため、売却後に他の共有者に対して買取や売却の打診が行われる可能性があり、これが原因で他の共有者からの不信感を招いたり、反発や対立を引き起こすなど予期せぬトラブルに発展する恐れもあります。

共有持分だけを売却する場合は、他の共有者に迷惑をかけないか、関係が悪化しないかをよく考えて、慎重に行動することが重要です。

共有名義不動産の売却の流れと必要書類

共有名義の不動産を売却するにあたり、通常は不動産会社が仲介に入ることとなるため、契約書の作成や各種手続きについてサポートを受けながら進めることができます。

共有者同士の意見調整や、必要書類の準備といった煩雑な作業についても、不動産会社の協力を得ることで負担を大幅に軽減できます。

しかしながら、売却をスムーズに進めるためには、不動産会社にすべてを任せきりにするのではなく、売主自身も売却の流れや必要書類について事前によく理解しておくことが大切です。

ここからは、共有者全員が合意の上で不動産全体を売却するケースを例に、売却の流れや必要な書類について具体的に解説していきます。

ぜひ、ご自身の状況と照らし合わせながら読み進めてみてくださいね。

売却準備と不動産会社への査定依頼

共有名義の不動産を売却するには、まず共有者全員の同意が必要です。

そのため、売却に進む前に「誰が共有者(名義人)なのか」を正確に把握しておくことが非常に重要です。

相続が繰り返されている不動産では、現在の共有者を把握しきれていないケースが少なくありません。

こうした状態で売却を進めると、あとになって新たな共有者が判明し、契約手続きが無効になったり、やり直しになったりするリスクがあるため、必ず事前に確認しておきましょう。

なお、共有者は法務局で取得できる「登記事項証明書(登記簿謄本)」で確認できます。

続いて、共有者全員の意思を確認し、売却に向けた方針をしっかりと話し合うことが大切です。

方向性が固まった段階で、不動産会社に査定を依頼しましょう。

必要書類の準備

共有名義不動産を売却するにあたり、以下の書類を準備する必要があります。

  • 登記識別情報通知書または登記済権利証
  • 境界確認書
  • 地積測量図
  • (共有名義者全員分の)身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票

※売却に携わることができない方が居る場合は、別の共有者に代理で手続きを委託するための委任状が必要です。

なお、住宅ローンが残っている場合には、上記の他「ローン残高証明書」などの関連書類も必要となります。

このように今回紹介した書類以外にも、状況に応じて追加の書類を求められることがあることから、実際の手続きでは不動産会社や司法書士からの指示に従って進めるようにしましょう。

売却契約の締結

購入希望者が見つかり契約内容に全員が合意したら、売買契約を締結します。

契約成立後は、引き渡し日までに以下の確認作業を行います。

  • 物件の最終確認(状態のチェック)
  • 抵当権の有無や抹消手続きの確認

《重要なポイント》
全共有者が売主として売買契約書に署名し、実印を押す必要があるため、1人でも反対する共有者がいれば契約は成立しません。

売却価格、引き渡し時期、その他契約条件について、全共有者が同意しているかよく確認しましょう。

売却益の分配

共有名義不動産を売却した場合、売却代金(いわゆる売却益)は、共有者それぞれの持分割合に応じて分配されます。

例)持分が2分の1ずつ=売却代金も2分の1ずつ受け取る

さらに忘れてはならないのが、売却時に発生する諸費用の負担についてです。

不動産の売却時には、以下の費用がかかります。

  • 不動産会社に支払う仲介手数料
  • 土地の境界を明確にするための測量費
  • ローンが残っている場合の抵当権抹消費用
  • 契約書に貼付する印紙税
  • 登記にかかる登録免許税
  • 譲渡益が出た場合の譲渡所得税 など

これらの諸費用については、あらかじめ共有者同士で「誰がどの程度負担するのか」を話し合っておくことが、トラブルを防ぐために非常に重要です。

一般的には、売却代金と同様に、持分の割合に応じて費用を分担するのが公平かつ納得を得やすい方法とされています。

そのため、売却に着手する前の段階で、「費用負担は持分割合に準じる」などの方針について、共有者全員で合意を取っておくことをおすすめします。

売却益が出た場合、税金の確定申告

不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合には、譲渡所得税と住民税を納めるために確定申告を行う必要があります。

確定申告は、共有名義の場合でも共有者一人ひとりが個別に行う必要があるため、各自で忘れずに対応しましょう。

一方で、売却によって損失(譲渡損失)が出た場合や、売却した不動産が自宅として使用していた一戸建てやマンションなどの居住用財産である場合には、条件を満たすことで特別控除や損益通算、繰越控除といった優遇措置を受けられることがあります。

なお、これらの制度を利用する場合も確定申告が必要となり、期限も設けられています。

申告漏れや納付の遅れを防ぐために必要な手続きは余裕を持って進め、期限内に正しく申告・納付を済ませる事が重要です。

まずは、国税庁のホームページで確定申告に関する情報を確認し、自分のケースに必要な手続きを把握しましょう。

不明な点がある場合は、電話や窓口での相談も可能です。

【参考】国税庁|確定申告書等作成コーナー 令和6年分

共有名義不動産売却時のトラブル事例と対策

スムーズに売却を進めるために、想定されるトラブルとそれらの対策について、あらかじめ知識を深めておくことが大切です。

共有者全員から同意を得られない、意見の相違がある場合

共有名義の不動産の売却を進めていくためには、まず共有者同士が丁寧に話し合いを重ね、売却の理由や今後の方針を決定していくことが何より重要です。

しかし実際には「今すぐ売りたい」「まだ保有しておきたい」「売却価格に納得できない」など、共有者の間で意見が食い違うことは珍しくありません。

このような場合は、感情的な対立を避けるためにも、当事者だけでなく不動産会社など第三者の力を交えて交渉を進めることで、方針がまとまりやすくなるでしょう。

それでも合意が得られない場合は、最終手段ではありますが、裁判所を通じて「共有物分割請求」などの法的手続きを行い、不動産を物理的に分ける、競売によって金銭を分けるなどの方法も検討しましょう。

持分売却についてのトラブル

話し合いがまとまらないときには、他の共有者に断りなく自分の持分だけを第三者に売却するケースもあります。

これは法律上認められている行為ですが、その持分を買い取った業者が、他の共有者に対して強引に立ち退きを求める、無理な条件を突きつけてくるなど、予期せぬトラブルが発生するリスクもあります。

こうした事態を防ぐためには、「持分を手放す場合は、まず他の共有者に優先的に売却の意向を伝える」といったルールを事前に決めておくことが重要です。

共有者間での信頼関係を保ちつつ、不必要なトラブルを避けるための大切な配慮と言えるでしょう。

買取業者からの強引な買い取りを持ちかけられる

先にも述べたように、近年では共有名義不動産の「共有持分」だけを安く買い取り、残りの共有者に対して圧力をかけるような悪質な業者も存在します。

とくに、相続後の混乱を狙って接触してくるケースが目立ちます。

「すぐ現金化できます」「他の共有者が反対していても大丈夫です」といった甘い言葉に惑わされず、必ず家族や他の共有者と相談したうえで判断することが重要です。

売却を検討する場合は必ず複数の業者から見積もりを取り、様々な意見やアドバイスを受けるなど、冷静な判断を心がけましょう。

不動産共有者同士が納得の上、売却を円満に行うコツ

最後に、共有者全員が納得し、円満に売却を進めるためのコツをご紹介します。

一括査定を活用

共有名義の不動産を売却する際、売却価格をめぐるトラブルを防ぐためには、根拠に基づいた客観的な情報を共有者全員で共有することが重要です。

そこで効果的なのが、不動産会社から得られた複数の査定結果を共有者全員に示す方法です。

なお、査定を受けるだけであれば共有者全員の同意は不要です。

査定結果をもとに話し合いを進めることで、感情や推測に頼らず、具体的な価格根拠をもって売却価格を決定しやすくなります。

査定の際は、複数の不動産会社に査定依頼ができる「一括査定サイト」を活用することで、手間なく売却価格の相場を調べることが可能です。

最終的に、査定結果をもとにどの会社と媒介契約を結ぶかを共有者全員で検討し、納得のいく形で売却活動をスタートすることが、スムーズな取引につながるでしょう。

不動産のプロ、専門家への相談

共有者全員が納得し、円満に不動産売却を進めるためには、不動産会社の担当者など専門家に力を借りることが大切です。

特に、共有者の間で意見が分かれている場合や、売却に反対する人がいるようなケースでは、第三者の視点を持つ専門家のアドバイスが大きな助けになります。

感情的な対立を避けながら、客観的な根拠や実務経験に基づいた提案を受けられることで、話し合いが前進しやすくなるでしょう。

なるべく早く売却の検討を始める

共有名義不動産の売却を少しでも考えているのであれば、できるだけ早く動き出しましょう。

なぜなら、共有者の1人が亡くなると、その持分は相続の対象となり、新たな相続人が共有者として加わることとなります。

共有者が増えるほど意見をまとめるのが難しくなり、売却の話も進めにくくなる可能性が考えられます。

したがって、無駄な時間をかけず、早めに適切な準備を進めることで、不動産の売却をスムーズに進められる可能性が高まるのです。

まとめ

共有名義の不動産を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。

自分の持分(共有持分)だけを売却する方法もありますが、次の点には注意が必要です。

買い手が見つかりにくい
共有持分は市場において価値が低く、買い手を見つけるのが難しいです。
たとえ売れたとしても相場よりも安くなってしまう可能性が高いです。

トラブルの原因になる可能性
買取業者が他の共有者に強引に残りの不動産の買い取りを迫るなど、思いもよらないトラブルに発展するリスクがあります。

そのため、やはり共有者全員の同意を得た上での売却が理想的です。

しかし、金銭が関わる話だけに、共有者同士だけで冷静に話をまとめることが難しいケースも少なくありません。

そのような場合には、不動産会社などの専門家に相談し、状況に応じた適切なアドバイスを受けることがおすすめです。

第三者の視点が加わることで、感情的な対立を避け、話し合いをスムーズに進めていくことができます。

不不動産の売却は人生でそう何度も経験することではありません。

思い込みや独断で進めるのではなく、しっかりと情報収集を行い、信頼できる専門家の力を借りることがトラブル回避の近道です。

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