日本の不動産価格は高騰し続けており、いまだに収まる気配が見えません。
不動産価格の推移について、不動産価格指数などの指標をもとに詳しく解説いたします。

また、2024年以降も不動産価格の高騰は続くのか、今後の見通しについて様々な観点から予測します。

不動産価格の推移

近年、土地・戸建て・マンションなどの不動産価格は上昇傾向にあります。
特にマンションの価格はここ10年間で約2倍になるなど高騰が顕著です。

不動産価格の動向は、不動産価格指数、公示価格などの指標を見ることで調べられます。

不動産価格指数

そもそも「不動産価格指数」とは?

不動産価格指数

国土交通省が公表している、不動産価格の動向を指数化した指標です。
年間約30万件にも及ぶ、不動産の取引価格情報をもとに作成しています。
不動産価格指数では、「土地(住宅地)」「戸建て住宅」「マンション」の指標を把握することができます。

「公示地価」との違い

似ているものに、公示地価と呼ばれる指標が毎年3月下旬に公表されます。

こちらは不動産価格指数と異なり、「土地のみ」を正常な価格を判定し公示するものとなっています。

ちなみに、住宅の不動産価格指数は「毎月」公表されるため、より細かな値動きを把握できる指標となっています。

その不動産価格指数をもとに、不動産価格の値動きを見てみましょう。

▼2023年11月分 不動産価格指数(住宅)

不動産価格指数(住宅)

【出典】国土交通省:不動産価格指数 令和5年11月・令和5年第3四半期分

※不動産価格指数では、2010年の不動産価格の平均を100と表しています。

《上記の表から読み取れること》
  1. 不動産価格は2013年頃から全体的に上昇している。
  2. 2020年以降は戸建住宅や住宅地で上昇傾向が顕著である。
  3. 2013年~2023年の10年間で2倍近く、マンションの価格が上昇している。

不動産価格が高騰し始めた2013年には自民党への政権交代が起こっています。
不動産価格の著しい高騰は、この年から開始した大胆な金融緩和策を発端としているのです。

首都圏の土地価格推移

具体的に不動産価格はどのくらい上昇しているのか、首都圏における土地・戸建て・マンションそれぞれの価格推移を確認してみましょう。

具体的な価格推移は、公益財団法人東日本不動産流通機構が公表している「首都圏不動産流通市場の動向(2013年度・2022年度)」で見ることができます。

▼首都圏の土地 価格推移

首都圏の土地価格推移

【出典】公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2013年度・2022年度)」

2018年頃から上昇し始めた土地の価格は、2022年から一気に急上昇していることがわかります。 2023年では30.42万円/㎡(新規登録)となっており、これは10年前の2013年の20.73万円/㎡(新規登録)と比較して、約1.5倍もの価格となります。

例えば100㎡の土地を購入したとすれば同じ土地でも1000万円ほどの差となり、驚くほど高値となっているといえます。

土地の価格とは、その土地に今後開発予定があるかどうか(駅や学校建設)や人口流入が見込めるようなイベントが予定されているか(オリンピックや万博など)、セレブが多く住むみんなの憧れのエリアかどうかなど、人々の注目度や人気に大きく左右されるものといえます。

現在の土地価格を大きく底上げしているのは、このような人気エリアに投資する層が多いためとも考えられます。

首都圏の中古戸建て住宅価格推移

次に、首都圏における中古戸建て住宅の価格推移を確認しましょう。

▼首都圏の中古戸建て住宅 価格推移

首都圏の中古戸建て住宅価格推移

【出典】公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2013年度・2022年度)」

中古戸建て住宅においても2021年頃から価格の上昇がグラフから読み取れます。 2013年の成約状況では2,921万円だったのに対し2023年では3,848万円と1000万円近く値上がりしています。

また、近年では中古戸建ての価格上昇に加えて物件の取引数も上昇傾向にあります。 考えられる理由としては、2022年に「住宅ローン控除」の適用範囲が変更されて以前より多くの中古物件が住宅ローン控除の対象と認められるようになったことや、2023年度の税制改正により、不動産売買時の登録免許税が2026年3月31日まで軽減されたことなどが挙げられます。

さらに、住宅のリノベーションが注目されていることも中古物件の需要が高まっている要因の一つです。
古民家を改装したカフェやレストランが話題になったり、中古住宅をおしゃれにリノベーションして貸家にしたりなど、住宅のリノベーション・リフォームはメディアでもたびたび取り上げられるほど大きな注目を集めています。
そのため今後もますます中古物件の需要が増えると考えられます。

首都圏の中古マンション価格推移

あわせて首都圏における中古マンションの価格推移を確認しましょう。

▼首都圏の中古マンション 価格推移

首都圏の中古マンション価格推移

【出典】公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2013年度・2022年度)」

中古マンションの㎡単価は2013年の成約状況で39.96万円だったのに対し、2023年では71.90万円と約1.8倍の値上がりとなっており、種類別に価格推移を見るとマンション価格の上昇率が一番高いことがわかります。

考えられる理由としては、リフォームが施された中古マンションをお得に購入したいというニーズの高まりに合わせて、近年では投資目的でマンションを購入する人が増えているからです。

戸建住宅同様に中古マンションへのリノベーションにも注目が集まっており、これまで新築マンションをメインに手掛けてきた企業でも、中古マンションのリノベーション事業を新たな収益の柱にするケースが増加するなど需要が高まっています。

不動産価格が高騰している理由

なぜ不動産価格がこれほどまでに高騰し続けているのか?

中古物件の需要が高まっていることに加えて、さらに次のような要因が考えられます。

金融緩和によるインフレの影響

不動産価格の高騰につながる主な要因の一つとして、インフレの影響が挙げられます。

※インフレ(インフレーション)とは、「継続的に物価が上昇し、自国通貨の価値が下がる状態」のこと、すなわちモノに対する「お金の価値」が下がることを意味します。

2013年からの日銀による大規模な金融緩和(超低金利政策)により、インフレが発生しました。

この政策により住宅ローン金利は、変動金利であれば1990年のバブル当時では7%以上だったのに対し、2023年現在では0.3%ほどと非常に低い数値となっています。
低金利の影響で誰もが住宅ローンを組みやすくなり、以前よりも高額な物件を購入できるようになったのです。

不動産に使えるお金の量が増えた一方で、市場にある不動産の量は変わらないので、当然貨幣価値は下がっていくこととなりました。(=インフレ)
結果、相対的に不動産価格が上昇している(ように見える)のです。

円安の影響

2022年以降から続く円安も、不動産価格高騰の要因となっています。

もともと他国の不動産と比較して割安感があった日本の不動産は、外国人投資家から需要がありましたが、近年の円安の影響によりさらに人気が高まっています。

外国人投資家は首都圏のマンションや、北海道のニセコ地区など、国内の投資家でもなかなか手が出ないほどの高額な物件を投資用に多数購入しており、不動産価格の相場を牽引している存在となっています。

また、円安の状況においては建築資材など様々な輸入製品の価格が高騰します。
それにより材料費や人件費を含めた建築費が全体的に高騰していることも、不動産価格が上昇している理由の一つとなっています。

建築費が高騰すると、新築マンションや新築戸建ての価格も上がります。
新築物件の価格が上昇すれば、新築物件を諦めて中古物件を購入する人が増えます。

すると今度は中古物件の需要が高まることから、中古物件の価格まで上がってしまう事となり、結果的に不動産価格全体が上昇することになるのです。

世界情勢の影響

国際情勢は不動産価格にも大きく影響を及ぼします。

ロシアによるウクライナ侵攻

ウクライナ侵攻の影響により、世界的に食料品等を中心としてた物価が上昇しました。
世界の主要国ではそのような物価上昇(インフレ)対策として、中央銀行が金利を上げていますが、日本はいまだ金利を上げておらず、世界の通貨と円との間で金利差が生じています。

運用は高い金利の通貨で行った方が有利であることから、他国の通貨が買われ円が売られます。
その結果、円の価値が下がる円安の状態に陥っています。

また、日本はロシアから原油や木材の輸入が制限されたため、これにより建築費が高騰しています。

新型コロナウイルスによるパンデミック

新型コロナウイルスの蔓延により、多くの人々のライフスタイルに変化をもたらしました。
テレワークという働き方が普及したことで、世界中で都心から郊外への住替え需要が増加しました。
それに伴い、各国で住居建築用の木材が不足し価格が高騰しました(ウッドショックと呼ばれる)。
また、コロナ禍の収束により経済が少しずつ回復してきたことがインフレ(物価上昇)に繋がり、さらなる不動産価格の上昇を招いています。

今後、住宅ローンの金利はどうなるか

住宅ローン金利の今後について、固定金利と変動金利にわけて、それぞれ解説します。

固定金利はどうか

固定金利は日銀が直接上下させることはできず、10年国債利回りに連動して上下するという仕組みになっています。

※国債=政府の借金。

現在の日本政府は莫大な借金を抱えています。

国債の利回りが上がってしまうと、政府が返済しなければならない利払いが増加するという仕組みのため、現在の日本では国債の利回りを低く抑えなければいけない状態です。

そのため日銀は、債券市場で国債が売りに出たら、日銀が国債を買い入れて流通量を絞り、相対的な需要を高めることで国債の価格を上昇させ、利回りを低く抑えています(イールドカーブコントロール)。
このイールドカーブコントロールは今後も継続される見込みであり、大幅な金利上昇はしばらく無いと予想されます。

ただし、債券市場で国債を買い集めることに無理が生じれば、許容幅を引き上げざるを得なくなります。
すでに2022年12月からは長期金利の変動許容幅を0.25%から0.5%まで、2023年7月には0.5%から1.0%まで引き上げており、徐々にではあるものの住宅ローンの固定金利は上昇傾向にあります。

変動金利はどうか

固定金利が上昇傾向にある一方で変動金利では反対に、少しでも多くの顧客を自行に呼び込もうという考えから、金融機関同士の金利引き下げ合戦が加熱している状況です。

そして日銀は「銀行の銀行」であり、民間銀行から預金を預かっている立場にあります。
金利を上げると日銀の民間銀行に対する利払いが増えてしまいます。

日銀自体の収益が悪化してしまえば、債券市場で国債を買い集めにくくなることから、やはり変動金利も安易に上げることができません。

そのため変動金利は今後も低金利の状態が続くと予想されます。

2024年以降、不動産価格はどうなるか

2024年以降の不動産価格の変動について、様々な観点から予想します。

日銀の金利政策

もし2024年以降、日銀が金利を上げれば不動産価格が下がる可能性はあります。

近年の不動産価格の上昇は、極端な金融緩和政策による低金利で引き起こされたインフレが要因の一つとなっているからです。

金利を上げることで金融機関の住宅ローン審査が厳しくなります。
特に個人の返済能力が十分でない場合には、貸出金額や返済期間などが厳しく審査されるため、住宅ローンを組めない=住宅を購入できない人が増えることになります。

その結果、住宅の需要が減退し、不動産価格が下落する可能性が高くなります。

ただし安易に金利を上げれば、高金利の負担と重税が一気に国民にのしかかり、日本経済に大ダメージを及ぼすと予想されます。
そのため政府が今すぐに金利を急激に引き上げる可能性は低いと考えられます。

人口の減少(2025年問題)

2025年問題という言葉を聞いたことはありますか?

2025年問題とは、現在800万人いる団塊世代(1947年〜1949年生)が75歳以上の後期高齢者となることで、「社会保障費の爆発的な増加」「労働力の不足」など、社会に様々な変化をもたらすことを意味します。

その2025年問題の一つとして「少子高齢化社会による不動産市場の変化」が挙げられます。

日本の人口は2008年にピークを迎え、2010年からは急激な人口減少が続いています。
こうした人口減少や少子高齢化の影響を受けて、今後は空き家の増加や、不動産の買い手不足などが問題になると考えられており、特に高齢者の多い地方を中心として不動産の価格は急落することが考えられます。

その一方で、若い世代が多いエリアでは将来的な需要増加が見込まれて不動産価格は高くなる傾向にあります。

近年では地方の不動産を売却して、公共サービスが充実している都市部に高齢者が移住するケースも増加しています。

そのため再開発や区画整理事業が計画されるエリアでは不動産価格が極端に高騰するなど、都市部と地方での不動産価格格差は今後ますます拡大することが予想されます。

2025年の大阪万博

不動産の価格は、都市開発が進む場所や、人口が多い場所で高まる傾向にあります。

2025年に予定されている大阪万博の開催地である夢洲(ゆめしま)では、周辺エリアも含めて大規模な施設の建設が進んでおり、不動産価格の上昇が予想されています。

《予定、または進行中の計画》
  • 新今宮駅前:星野リゾートの大規模ホテルをオープン
  • 梅田貨物駅跡地:再開発「うめきた2期」進行中。
  • 梅田と関西国際空港をつなぐ「なにわ筋線」計画始動(2031年春の開業を目指す)
  • 大阪メトロ中央線:夢洲延伸を目指し計画進行中(2024年の夢洲駅完了予定)
  • 総工費1000億円超の夢洲駅タワービル計画
  • 北陸新幹線延伸計画(2046年開業予定)
  • 東京・大阪間を67分で繋げるリニア中央新幹線計画(早ければ2037年にも開業)

上記の賑わいを見込んで海外からの投資も増えており、多くの外資系高級ホテルなどが大阪に開業を予定しています。
そのため大阪・関西圏の不動産価格は2024年以降ますます上昇すると予想されます。

まとめ

不動産価格が上昇している理由として、以下の影響が考えられます。

  • 金融緩和によるインフレ
  • 円安
  • 戦争やパンデミックなどの世界情勢

今後の予想としては、今すぐに金利が上昇する可能性は低いため2024年以降もしばらくは金融緩和(低金利政策)によるインフレ=不動産価格の上昇が続くと考えられます。

また、2025年問題のひとつである少子高齢化が進めば、都市部を除く不動産の価値はどんどん下がり、不動産市場が冷え込むと予想されます。

対して、2025年に大阪万博が開催される大阪周辺の関西圏では、海外投資家からの人気も後押しして不動産価格の高騰が続く見込みです。
ニセコなど海外投資家から注目されている一部のエリアを除いて、この都市部と地方の不動産価格格差は今後もより拡大する流れになってきているといえます。

不動産価格が下落するタイミングとしては、「日銀が金利を大幅に上げたとき」や「不動産関連の税制が改正されたとき」が挙げられますが、現状を踏まえると少なくとも今後1~2年間は不動産価格の高騰は続くものと考えられます。