住宅などの不動産を購入するときには、様々な諸費用がかかります。
土地や建物の価格といった購入代金のほかにも、各種手数料や公的手続きにかかる費用、さらには各種保険料や税金などもかかることになります。
さらに購入時(イニシャルコスト)だけではなく、その後も維持費(ランニングコスト)といった形でも費用が発生します。
こうした諸費用を把握し、不動産の購入時に適切なマネープランを立てておけば、安心して不動産購入や購入後の不動産運用(居住)にあたることができるでしょう。
この記事では、不動産購入時にかかる諸費用の解説のほか、費用を節約する方法なども交えて、不動産購入を考える方や購入後の方に役立つ情報を紹介します。
不動産購入時にかかる諸費用の一覧
まずは、不動産購入時にかかる諸々の費用について、一覧で概観してみましょう。
以下の表をご覧ください。
費用 | 支払い時期 | 費用の目安 |
仲介手数料 | 売買契約時、物件引き渡し時 | 売買代金✕3%+60,000万円が上限 |
印紙税 | 売買契約時、ローン契約時 | 別途記載 |
手付金 | 売買契約時、住宅ローンの本審査前 | 売買代金の5〜10%程度 |
ローン保証料 | 融資時の一括払い、金利に上乗せしての分割払い | 数十万〜百万円超 |
事務手数料 | 融資時 | 3万円から10万円程度 |
火災・地震保険料 | 融資時一括、分割など | 内容により変動 |
印紙税 | 住宅ローン融資時 | 内容により変動 |
登録免許税 | 登記時 | 数十万円程度 |
司法書士への報酬 | 登記時 | 5万円~10万円 |
抵当権設定費用(司法書士への報酬) | 登記時 | 3万円〜10万円 |
住民票発行手数料 | 登記時 | 250円〜400円 |
不動産取得税 | 後日請求 | 固定資産税評価額×3% (土地に関しては優遇あり) |
固定資産税、都市計画税 | 毎年 | 数万円〜数十万円程度 |
このように見渡してみるだけでも、物件購入費以外にかなりのお金が必要になることがわかります。
では次から、必要なタイミングや性質ごとに諸費用をまとめ、それぞれ詳しく解説します。
契約時にかかる諸費用
まずは、契約時にかかる費用について解説します。
契約時=不動産会社を介して物件の購入を行う際のことです。
このときかかるお金は、主に3つあります。
・不動産会社に支払う「仲介手数料」
・売買契約書に貼り付ける「印紙税」
・契約成立を担保する目的で売主に支払う「手付金」
仲介手数料
不動産を購入するとき多くの場合は、売主と買主の間に入ってくれる不動産会社を仲介して、手続きを進めることになります。
不動産の購入が決まると、不動産会社に対して仲介手数料を支払うことになります。
新築だと仲介手数料が不要になることは多いものの、中古住宅などでは必ず必要になります。
売買契約時に支払うのが一般的ですが、物件の引き渡し時に分割して支払うケースも見られます。
金額は、下記が上限として定められています。
仲介手数料上限 = 取引価格 ✕ 3% + 6万円 |
印紙税
物件を購入する時は、その物件の売買契約書というものを作成します。
こちらには印紙というものを貼り付ける必要があり、こちらの印紙代としてかかるお金です。
印紙の額は、契約書に記載の金額によって変動します。
例としては、下記のようになります。
契約金額が 1千万円超〜5千万円以下: 2万円
契約金額が 5千万円超〜1億円以下: 6万円
契約金額が 1億円超〜5億円以下: 10万円
【参考】国税庁|No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書までhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm
この他にも契約金額の枠が設定されており、その金額によって印紙代も増減します。
なお、こちらには期限付きの軽減措置なども用意されている場合があるため、不動産会社などに相談してみるとよいでしょう。
手付金
物件購入契約時に、買手が売手に支払う「手付金」というものがあります。
手付金を支払うことにより、売手と買手双方の意思表示が信頼性のあるものとなり、その契約の成立が担保されることになります。手付金は、購入価格の20%を上限と定められていますが、相場としてはおおむね、売買代金の5%から10%となります。
なお、手付金とは、契約の成立を担保=買手が「この契約を成立させる意思を、このお金を預けることで表示、および保証しますよ」という意味合いのお金です。
そのため、契約の決済や引き渡しのときには買手の手元に返還されるお金となります。
とはいえ実際は、預けたお金をそのまま購入価格の残金支払に充てることが一般的で、結局は出ていくお金、と捉えてもよいかもしれません。
住宅ローン借り入れ時の諸費用
次に、住宅ローンを借りる際にかかる諸費用について解説します。
住宅ローンを借り入れるために、買主は、借入先(銀行など)に、ローン保証料や事務手数料を支払います。
この際にも印紙税が必要になり、また購入した物件に対して保険加入を行う場合、火災保険料金や地震保険料も支払うことになります。
ローン保証料
ローン保証料とは、ローンのお金を借り入れる際、保証会社の保証を受けるために、保証会社に対して買主が支払うお金となります。
ローン保証料の金額は、金融機関や売買契約の内容によって変動するものの、一般的に数十万円程度となります。
ただし高額になる場合は、百万円を超えてくることもあります。
支払いのタイミングは、融資時の一括払いか、金利に上乗せして分割で払うか、のいずれかが一般的です。
ただし金融機関によっては、ローン保証料が無料である場合もあります。
事務手数料
ローンを利用する際には、金融機関にも事務手数料を支払います。
こちらは3万円から10万円程度が一般的です。
事務手数料は意外と開きがあり、可能であれば事前に確認しておくことも有効かもしれません。
火災保険料、地震保険料
購入した不動産について保険加入を行う場合は、火災保険料や地震保険料を支払う必要があります。
火災保険については、住宅ローン契約の条件となっている場合が多く見られますが、地震保険は必須となっていない金融機関もあります。
とはいえ地震の多い我が国では、任意でも加入するケースが多く見られます。
支払い方法は、ローン融資時に一括で支払う方法や、分割で支払う方法などがあります。
支払金額は、内容により変動します。
印紙税
住宅ローンを借りるときは、金銭消費賃借契約書というものを作成する必要があり、こちらにも印紙を貼り付ける必要があります。
住宅ローン融資時の印紙代は、契約書に記載された金額によって変動します。
例としては下記のようになります。
契約金額が 1千万円超〜5千万円以下: 2万円
契約金額が 5千万円超〜1億円以下: 6万円
【参考】りそな銀行|印紙税の一覧表 お借入金額またはご契約極度額https://www.resonabank.co.jp/kojin/jutaku/fee/detail1.html
登記手続きにかかる諸費用
購入した物件の所有者について、登記簿に住所や氏名を掲載することを「登記」といいます。
ここでは、登記にまつわる諸費用、つまり登録免許税や司法書士報酬、住民票発行手数料について説明します。
登録免許税
登記手続きを行う際には、登録免許税という税金を支払う必要があります。
金額は下記のように計算されます。
課税標準 ✕ 税率 = 登録免許税の金額 |
課税標準や税率は、その契約の内容によって変動しますが、金額は概ね数十万円となります。
ただし、登録免許税には軽減措置が設定されており、設定されている期日内に適用要件を満たした場合は、申請によって登録免許税の支払金額を減額することも可能です。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。
司法書士への報酬
登記手続きを司法書士に代行依頼したときには、こちらへの報酬も必要となります。
金額は内容や依頼先によって変動しますが、相場としては5万円から10万円程度と言えます。
抵当権設定費用(司法書士への報酬)
住宅購入の際に住宅ローンを組む場合は、債務者(ローン借り主=不動産買主)の返済を保証するために、債権者(ローン貸主=金融機関)が抵当権というものを設定します。
抵当権とはつまり、ローン返済が不可能となったときに、担保となっている不動産物件を、債務者が競売にかけ、その売却代金から融資金額の返済分を回収できる、という権利のことです。
抵当権の設定も登記を行うことになり、こちらも司法書士に手続きを依頼することになります。
司法書士への報酬はおおむね、3万円から10万円が相場と言えます。
住民票発行手数料
不動産の登記時には、住民票の添付も必要になります。
こちらにかかる費用は、250円から400円程度と言えます。
近年はコンビニ交付が広く利用されており、費用もコンビニ交付のほうが安く済むケースが多くなっています。
不動産購入後にかかる諸費用
不動産購入後にも、様々な費用が発生します。
そのうち税金としてかかってくるものは、不動産の取得時に一度支払う必要がある不動産所得税、そして、毎年かかってくる固定資産税と都市計画税が主なものとなります。
不動産取得税
土地や建物といった不動産を取得(購入、贈与、建築など、ただし相続の場合はのぞく)した場合に課税されてくる税金が、不動産所得税です。
計算方法は下記となります。
不動産評価額 ✕ 税率(4%) = 不動産所得税の納付金額 |
なお軽減税率が適用される場合は、税率は3%に減額されます。
また、税負担をさらに軽減できる「新築住宅・住宅用地特例」を適用できる場合もあります。
※こちらに過去に納品した「不動産取得税 いくら」の記事に内部リンクを設定してください。
【参考】「不動産所得税」(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_17.html
固定資産税、都市計画税
固定資産税、都市計画税とも、一年に一度の支払が必要となります。
納付金額は物件の条件によって幅がありますが、両者を合わせて数万円から数十万円が一般的です。
- 固定資産税とは?
住宅、あるいは土地、田畑、お店や工場といったものを、税金の分野では「固定資産」と呼び、その固定資産の所有者が固定資産所在の市町村に納付する税金を、固定資産税と呼びます。
計算方法は下記となります。
課税標準額 ✕ 税率(1.4%) = 固定資産税の納付金額 |
【参考】総務省|固定資産税
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_15.html
- 都市計画税とは?
都市計画税は、「市街化区域」と呼ばれる市町村あるいは東京23区内に土地や家屋を持っている人に課される、地方税です。
計算方法は下記となります。
課税標準額 ✕ 税率(0.3%) = 都市計画税の納付金額 |
諸費用を節約する方法
不動産の購入に伴って、購入時、あるいは購入後に逐次、様々な費用がかかってきます。
こうして概観すると、合算した追加費用は結構な額となることがわかります。
何百万円、何千万円、といった規模の買い物である不動産の価格に比べると、数万、数十万、といった金額は小さいものに感じてしまう場合もあります。
しかし、毎日の生活にかかるお金と比べてみると、その諸費用の方も大きな金額と言わざるを得ません。
ここからは、こうした諸費用をできるだけ節約するための方法について見てみます。
引っ越し時期を考える
不動産業界では、繁忙期と閑散期という2つの時期が意識されることが一般的です。
繁忙期を避けて引っ越しを考えることにより、そこにかかってくる費用を節約することができます。
《繁忙期》
不動産業界における繁忙期は、主に1月から3月を指します。
卒業、入学、就職、転勤などのイベントが重なる時期のために多くの人が引っ越しをし、関連業者は入退去の対応や部屋のリフォーム、部屋探しを行う顧客の対応などで、とにかく忙しくなります。
つまり需要が多くなって不動産の引き合いが多くなり、不動産に関わる各種業者が忙しくなる時期には、不動産業者や引越し業者の需要もひっ迫し、各種サービスの価格も上昇する傾向にあります。
《閑散期》
年間を通じて最も需要の落ち着く時期が、7月から8月とされます。
年度始めを挟んだ部屋探しは一段落しており、秋の人事異動にも間があるため、不動産関連業者は対応状況に余裕が生まれます。
この閑散期に引っ越しを進めることができれば、引越し業者のサービス料金が繁忙期よりもぐっと安くなっているほか、不動産業者に家賃や初期費用の値段交渉などを持ちかけられることもあります。
火災保険や地震保険を賢く選ぶ
火災保険や地震保険は、一定期間ごとの更新料が必要になりますが、その更新期間はある程度の幅があり、自分で選ぶことができます。
《火災保険の賢い選び方》
その①
最長期間である5年間の契約更新がおすすめです。
⇒長期割引というかたちで費用を節約することができます!
※注意点…保険料の支払いタイミングは、契約更新時に期間分を一括払いすることになります。そのため、トータルの保険料は五年間のほうが安くなるとはいえ、更新時の支払金額は、1年契約で1年毎に支払う場合のそれぞれの額よりも大きくなります。
その②
火災保険は、新築割引、築浅割引、オール電化割引、あるいはウェブ申し込みによる割引といった各種割引精度が用意されていることも多いものです。これらも活用すると、節約できる金額はさらに大きくなります。
《地震保険の賢い活用法》
火災保険に加入すると、オプションのような形で地震保険にも加入することができます。
2011年の東日本大震災以降、地震保険に対する需要は急激に上がり、それに応じて地震保険の料金も上昇していますが、こちらも様々な割引制度を活用できる場合があります。
免震建築物割引、耐震等級割引、建築年割引など、地震による被害を抑制する要素を供えた物件は割引が適用される可能性が高くなるため、こうした点も意識して物件を選ぶと、トータルの出費を抑えられるかもしれません。
まとめ
不動産購入時にかかる諸費用は多岐に渡っており、中には数十万円といった金額に膨らむものもあります。
不動産は物件だけで数千万円という額に及ぶことも多く、その他の諸費用が軽く見えてしまうという人も珍しくありません。
ですが、例えば毎日かかってくる生活費や、月次収入などを考えると、諸費用を抑えることで得られるメリットは大きいものであることが理解できるはずです。
不動産を購入したあとに想定外の出費に驚く、といったことのないよう、不動産購入にあたっては、諸費用までを視野に入れた余裕のある資金計画を考えておきましょう。