登録免許税は、不動産を購入・相続した際に課せられる税金です。

住宅を新たに手に入れる際は、建物と土地を合わせた物件の購入費用のほか、この「登録免許税」というコストも数十万円単位で発生します。

ここでは、不動産を所有するなら知っておきたい登録免許税について、計算方法や申請方法を解説します。

また、税率を減らせる「軽減措置」についても、わかりやすく解説します。

登録免許税とは?

登録免許税とは、家などの不動産を購入した際に、あるいは相続して新たに不動産を所有した際にかかる税金です。

消費税や所得税、住民税といった税金とは異なり、日常で目にする名称ではないことから、登録免許税、と聞いて身構えてしまう方もいるかもしれません。

しかし、土地や家屋といった物件を所有することになる方にとっては必ず関わることになる税金です。

どのように計算され、どのような金額になるのか?

軽減措置にはどのような要件があり、どのような手続きが必要なのか?

いざというときにあわてないよう、この機会に登録免許税について知っておきましょう。

登録免許税の計算方法

まずは登録免許税の計算方法について説明します。

シンプルにその計算方法を表すと、式は次のようになります。

課税標準 ✕ 税率 = 登録免許税の金額

「課税標準」とは?

税金を算出するための基準として定められる数値のことです。

不動産取得時における登録免許税の算出に用いる課税標準は、「不動産価額」ならびに債権金額、不動産の個数、に応じて決定されます。

「不動産価額」とは?

その不動産の価格を現すものです。

より詳しく言うと、「市町村役場で管理する固定資産課税台帳に記載された、その不動産の価格」となり、課税標準の主な基準となります。

《ケース①》新築で建物に固定資産税評価額がまだ登録されていない場合
⇒法務局(登記官)が認定した価格=不動産価額として扱われます。

《ケース②》既に所有している物件の場合
・固定資産評価証明書
・固定資産税納税通知書の明細に記載されている「価格」
・ご自身の持ち分(登記簿謄本、あるいは権利証に記載されたもの)
これらを確認すると、その不動産の概算価格を確かめることができます。

こうして定められた「課税標準」に対し、「税率」を乗算することで、登録免許税の金額を算出します。

「税率」とは?

登記の内容によって設定される税率のことです。

登記の内容登記の種類税率
土地の所有権移転登記所有権移転登記2.0%
土地の相続、法人の合併または共有物の分割0.4%
中古住宅など2.0%
建物(住宅用家屋)の新築所有権保存登記0.4%


表の①~③に該当する場合、登記の種類は「所有権移転登記」となります。

これは土地の所有権移転(売買)や相続、あるいは中古住宅では、売り主(前の持ち主)から買い主(次の持ち主=自分)に所有権を移転することになるため、そのように呼ばれています。

一方で、表の④建物の新築をする場合は、「所有権保蔵登記」と呼びます。

この場合は新たに設定した所有権を登記簿に作成し、保存します。

【参考】国税庁|No.7191 登録免許税の税額表
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm

このようにして、「課税標準」に「税率」を乗算することにより、登録免許税の金額が計算されます。

登録免許税の軽減措置

上記の計算(課税標準 ✕ 税率)で、ひとまずの登録免許税の金額が算出されるわけですが、その数字がそのまま支払額となるとは限りません。

多くの場合は「軽減措置」を適用することで、ここから支払額を抑えることが可能になります。

登録免許税の軽減措置は、下記のような内容となっています。

登記の内容税率(本則 → 軽減後)
所有権移転登記2.0% → 1.5%
所有権保存登記0.4% → 0.3%

さらには、相続による土地の所有権移転である場合は、下記のような免税措置(登録免許税を課されない)を適用できます。

▼相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合の登録免許税の免税措置

個人が相続(相続人に対する遺贈も含みます。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から令和7年(2025年)3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さないこととされました。

▼不動産の価額が100万円以下の土地に係る登録免許税の免税措置

土地について相続(相続⼈に対する遺贈も含みます。)による所有権の移転の登記又は表題部所有者の相続人が所有権の保存の登記を受ける場合において、不動産の価額(※1)が100万円以下の土地であるときは、平成30年11月15日(※2)から令和7年(2025年)3月31日までの間に受ける当該土地の相続による所有権の移転の登記又は令和3年(2021年)4月1日から令和7年(2025年)3月31日までの間に当該土地の表題部所有者の相続人が受ける所有権の保存の登記については、登録免許税を課さないこととされました。

【引用】法務局|相続登記の登録免許税の免税措置について
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000017.html

軽減措置の対象となる条件

登録免許税の軽減措置を適用するためには、次の要件を満たす必要があります。

・自己の居住用住宅であること
・建物の床面積が50平米以上であること
・新築または取得後1年以内に登記をすること

また、土地の所有権移転登記に関わる税率軽減措置では、その土地の面積や、その土地の住宅の有無などは問われません。

《適用期限》

登録免許税の軽減措置を受けるためには、適用期限を守る必要があります。

  • 所有権移転登記/軽減措置の適用期日
    土地:2026年(R8年)3月31日まで
    建物:2027年(R9年)3月31日まで
  • 所有権保存登記/軽減措置の適用期日
    建物:2027年(R9年)3月31日まで

【参考】税務署|令和6年4月 登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0020003-124_01.pdf

なお、こうした登録免許税の軽減措置に関わる用件や期限などは、少々入り組んでいるうえ時期によっては内容更新なども行われる可能性があります。

不動産業者などの専門家に相談を仰ぐことを忘れないようにしましょう。

軽減措置の申請方法

軽減措置の適用を受けるためには、

  • 住宅の所在する市区町村の証明書(※)を登記申請書に添付する
  • 対象の不動産の取得後一年以内に登記を済ませる

上記の手順で申請を行います。

(※)登録免許税の税率軽減措置の適用条件を満たしている、という内容を証明する書類

《注意点》
登記後に証明書を別途提出とした場合は、軽減措置は受けられなくなってしまうので注意が必要です。

不動産の登記手続きと納付方法

不動産登記の手続きは、司法書士、土地家屋調査士といった「資格者代理人」に依頼するのが一般的ですが、ご自身が個人として手続きすることも可能です。

購入、贈与、相続などと、不動産登記の理由はいくつかあり、それによって必要な書類も変わってきますが、手続きの流れはおおよそ同様となります。

なお不動産の登記は、書類を用いて窓口または郵送で提出する他に、オンラインで申請を行うこともできます。

登記手続きの流れ

自分で不動産登記を行う場合は、登記申請書と必要書類を法務局の窓口に提出し(郵送可)、申請します。

手続きの流れを順番に解説します。

  1. 必要書類を用意する

《不動産購入による所有権移転の登記の場合》

  • 登記済権利証(登記識別情報通知)
  • 売り主の印鑑証明書(発行3ヶ月位内のものに限る)
  • 買い主の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 売買契約書

《相続による登記の場合》
上記①~⑤の書類一式の他、以下の書類が必要です。

  • 被相続人の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(遺産分割協議があった場合)
  • 遺言書(遺言に基づいた相続登記の場合)
  • 登録免許税を納付する

納付方法は原則として現金となります。(銀行等で納付書を入手できます)

また、納付時に受け取った領収書は登記申請書に貼り付けて提出する必要があります。

そのためこの領収書は紛失しないよう特に注意しましょう。

  • 登記申請書を作成する

登記申請書の書式は、法務局からダウンロードすることができます。

購入、贈与、相続といった登記の理由ごとに書式も異なるものとなるため、自分が当てはまるものを選んで記入例のとおりに記入します。

【参考】法務局|不動産登記の申請書様式について
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html

  • 登記申請書と必要書類を法務局の窓口に提出(郵送可)する

登記を行うことができるのは、登記を行う不動産が所在の地域の法務局に限ります。

申請後一週間から10日ほど待つと、登記が完了し、登記識別情報通知と登記完了証が発行されます。

これらを受け取るには、完了予定日以降に該当の法務局に行って受け取るか、事前申請により自宅などへ郵送してもらうかの、いずれの方法でも可能です。

【参考】法務局|不動産登記申請手続
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/touki1.html

登記にかかるその他の費用

登記には以下のような費用がかかります。

  • 登録免許税

例)

建物が課税標準額にして1500万円の場合:税率2.0%=30万円
土地が課税標準額にして2000万円の場合:軽減税率適用後の税率1.5%=30万円
この合計である60万円が登録免許税の納付額となります。

  • その他の費用(金額はいずれも一通あたりの金額です)

・戸籍謄本 450円
・除籍謄本 750円
・住民票 300〜400円程度(役所や取得方法による)
・住民票除票 300〜400円程度(役所による)
・固定資産評価証明書 100〜400円程度(役所や取得方法による)
・登記簿謄本 600円(役所や取得方法による)
・印鑑証明書 200〜450円程度(役所や取得方法による)
・改製原戸籍 750円

まとめ

家や土地などの不動産を、新築・購入・相続といった手段で所有した際には、登録免許税を納める必要があります。

登録免許税は数十万円という大きな金額がかかるうえ、不動産の所有にはほかにも様々な費用がかかります。

そのため、登録免許税については軽減措置を活用して、支出を抑えることが推奨されます。

軽減措置のメリットを活かすためには、以下の点をよく確認することが重要です。

・軽減措置の期限
・適用になるための要件
・適切な手順

手続きはご自身で行うことが可能ですが、書類の用意、自分の登録免許税の内訳の判別、また申請の手間自体など、煩雑な部分があるのは事実です。

不動産の登録免許税を納付する必要が出てきた場合は、この記事で紹介したような知識を覚えておきつつ、専門の業者(不動産会社など)に相談するのもおすすめです。