2024年4月12日 埼東よみうり掲載
目次
- 売却のタイミングでなにが変わるの?
- 相続税評価額の節税について
-
不動産売却のタイミングを考える際にチェックすべきこと
①固定資産税の無駄払い
②今後不動産価値が下落する市場環境
③資産の組み換え(賃貸・新NISA等)を
したほうが有利になる・賃貸物件として運用する
・現金化してその資金を運用
◎当社のお客様事例「資産の組み換え」
④相続人の権利関係が複雑になることが
予想される -
不動産を遺産分割する方法
1. 現物分割
2. 代償分割
3. 換価分割
・分割せずに複数人で所有する
(共有名義にする) - ☆トクするポイントまとめ
- 当社について
相続税の節税効果とは?
小規模宅地等の特例制度
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売却のタイミングでなにが変わるの?
空き家等の売却相談を受ける際、「相続したら売却する」とお考えのお客様がいらっしゃいます。
実際、不動産の相続税評価額は現金よりも低く評価されるため、不動産で相続してから売却、
というのは一見賢い選択に見えます。
ただし、相続前(もしくは早め)に売却したほうが有利になるケースもあるため注意が必要です。
今回は売却のタイミングを計るにあたり、考慮するポイントをご紹介します。
相続税評価額の節税について
不動産を活用すると相続税が節税できるとよく言われるのは、一般に不動産の相続税評価額は
不動産の時価よりも低く評価されるため、その分相続税が少なく計算されるためです。
例として遺産が2億円とした場合、全て現金であれば相続財産の評価額は2億円となり、
2億円に対して相続税が課税されます。
しかし、遺産が時価2億円の不動産の場合で相続税評価額が1憶4,000万円と評価されれば、
6,000万円分課税対象額を小さくすることができます。
相続税における不動産の評価方法は?
不動産は土地と建物に分けて評価します。
土地は国税庁が発表する路線価に基づいて評価します。(市街化調整区域など路線価の指定されていない地域は固定資産税評価額に倍率を乗じて計算します。)
建物は固定資産税評価額に基づいて評価します。
路線価は実勢価格の70~80%を目安に算定されています。
ただし、地域によっては時価の上昇に路線価の上昇が追い付いていないことも多く、
実際には倍以上乖離しているケースもあります。
この差額を利用し、相続税評価額を小さくして相続税を節税する方法が用いられます。
一方、建物については固定資産税評価額に基づいて評価しますが、
こちらも実際の建物の購入価格よりも固定資産税評価額の方が低く算定されるため、
土地と同様に差額を活用して節税することができます。
また、賃貸不動産の場合、居住用の宅地・建物の評価側から
賃貸部分を控除することができるため、更に相続財産を圧縮することができます。
小規模宅地等の特例制度
居住用や事業用に使われていた宅地等は、
その宅地等の評価額から一定割合を減額できる特例があります。
これを小規模宅地等の特例といいます。
居住用であれば330㎡まで評価額を80%減額することができます。
投資不動産については貸付事業用宅地等に該当し、
200㎡まで評価額を50%減額することができます。
不動産売却のタイミングを考える際にチェックすべきこと
固定資産税は建物や土地を所有している限り、毎年納税義務が生じます。
毎年4月から6月頃に管轄の自治体から納税通知書が送られてきます。
年間の固定資産税の目安は、一軒家で10万から15万円、マンションで8万円から12万円程度です。
マンションであれば、修繕積立金や管理費なども重くのしかかります。
空き家空き地のまま固定資産税のみ支払う期間が何年にも及ぶと、無視できない金額となり、
財産を毀損しているともいえるため、節税効果と逆転しないよう早めに
シミュレーションを行いましょう。
2024年4月現在、首都圏やその郊外を中心に不動産価格は高い水準で推移しています。
一般に地価のピークは株価の推移の1年後に迎えるとされ、
ただちに大きく値下がりするとは限りませんが、今後少子化により、
市場への空き家の供給が一気に増えていくと予想されているため注意が必要です。
第1次ベビーブームで誕生した団塊の世代が、
2025年には75歳以上(後期高齢者)となり、不動産相続が増加することが予想されるためです。
これは「2025年問題」と言われています。
内閣府が発表した『令和4年版高齢社会白書(概要版)』によると、
2025年に総人口に占める65歳以上人口の割合は約30.0%となるとの見通しが立てられています。
つまり3人に1人が65歳となります。
それに伴い、団塊の世代が相続や財産整理を目的とした不動産売却が増加すると考えられます。
市場に流通する不動産の供給が増加することで、価格競争が4顕著になり
不動産価格が下落すると考えられます。
この傾向は地方ほど顕著になりますので、少子高齢化が進み、
空き家が目につき始めている地域では特に注意が必要です。
資産の組み換え(賃貸・新NISA等)をしたほうが有利になる
次は機会損失のお話です。
空き家空き地を相続まで放置することは、一族の運用資産を眠らせている可能性があります。
当社の基本的なご提案としては「不動産を賃貸物件として再生し、家賃収入が入るようにしませんか?」ということになりますが、お客様の中には、早めに不動産を売却して現金化し、
その資金を株式などの金融商品で運用された方もいらっしゃいます。
こうすることで、不動産を相続する際の節税効果よりも有効な資産活用となるケースがあります。
空き家を賃貸することの最も大きなメリットは、売却と違い、
不動産を手放さずに活用ができる点です。
節税効果以外でも、将来自分や子供が住むかもしれない、
心の整理がまだついておらず売却に踏み切れないなど、の理由では賃貸での活用が選択肢となります。
もう一つのメリットは空き家管理の手間から解放されるということです。
人に貸すことで、入居者や賃貸管理会社に管理を移管して建物維持ができるので、
最近ではリフォームして賃貸するというケースが増えています。
特に賃貸戸建はファミリー層の賃貸需要に対して、供給数がまだまだ少ないのが現状で、
築年数や立地に関係なく安定した家賃収入が見込めます。
入居期間も長期間となるケースが多く、収支計画が立てやすいのが魅力です。
2024年から新NISAが始まりました。
運用益を非課税にできる枠が大幅に増額されたため、
投資に回せる手元資金が大きいほどより多くの恩恵を受けられます。
毎年最大360万円、累計1,800万円までの枠を持つため、新NISAでの投資をお考えで、
こちらの枠を使いきれない方は、不動産を整理して原資を確保しようと考える方も増えています。
◎当社のお客様事例「資産の組み換え」
駅前一等地に土地を所有されているオーナー様からご相談いただき、
遊休地だった空き地を売却して、タワーマンションを購入する形で
「資産の組み換え」をしました。
1戸あたりの床面積が小さく、土地部分の評価を抑えられるタワーマンションの相続税評価は、戸建と比較してもさらに低い金額で評価されます。
また、賃借することで、賃貸不動産の相続税評価となります。
なので、資産の組み換えにより、
① 相続税評価の圧縮による節税効果(数千万円)
② タワマン賃料収入による納税資金対策
③ 物件は相続後に売却。その際の売却益(数千万円)
上記の効果があり、相続人の皆様にも大変ご満足いただけました。
※区分所有マンションの評価方法が改正され、令和6年(2024年)1月1日以降の相続・贈与より、ほとんどのマンションの評価額が引き上げられることとなりました。このように、法改正や市場変化により有効な手法は変化していきますので、検討タイミングにあった方法を選択するために、信頼できる不動産会社に相談することが重要です。
遺産を相続した場合、遺言が無ければ相続人たちの間で遺産の分け方を協議する必要があります。
この協議を「遺産分割協議」と呼びます。
相続した遺産が不動産の場合でも、遺産分割協議で分割することが可能です。
ただし、不動産の遺産分割は現金遺産の分割よりも難易度が高いです。
遺産が現金であれば、相続割合にあわせて遺産を分割することができますが、
不動産の場合は等分するのが難しいケースが多いからです。
さらに不動産は資産価値が比較的高いため、相続人の間で協議が難航することもあります。
不動産を遺産分割する方法
不動産を遺産分割する方法として、次の3つの方法が挙げられます。
不動産をそのままの形で受け取る方法になります。
遺産のうち不動産が複数ある際に有効な分割方法です。
たとえば、遺産のうち不動産が2つあり、相続人が2人の場合は、
協議によって各不動産をそのまま1つずつ分け合います。
不動産によって資産価値が異なるので、
誰がどの不動産を相続するかは協議しなければなりません。
土地を相続する場合は、土地を分筆することも可能です。
分筆とは、一つの土地を複数に分けて登記する手法です。
分筆を行うことで、遺産のうち土地が一つであっても分割相続できます。
ただし、分筆が行えるのは「土地」のみです。
「建物」は分筆できません。
また、都道府県の条例によっては分筆が行えない土地もあるので注意が必要です。
代償分割とは、不動産を1人の相続人が受け取り、
その相続人が残りの相続人に対して法定相続割合に沿って代償金を支払う手法です。
不動産の現物分割が難しい場合に代償分割が利用されることが多いです。
ただし、代償分割を実施する場合、相続する不動産の「評価」が必須になります。
不動産の評価方法は多種多様であるため、どの評価方法を使うかで資産価値に差がつくケースも多く、評価方法の選択で揉めてしまう可能性があります。
また、不動産の相続人が代償金を支払えるだけの経済的な余力が必要です。
換価分割とは、遺産の不動産を売却して、得られた売掛金・現金を分割相続する方法になります。
均等に遺産相続できるため、相続トラブルを最小限に抑えられます。
金銭的な不公平が生じない点も、換価分割のメリットです。
ただし、不動産がすぐに売却できるとは限りません。
売却を終えるまでに時間がかかってしまい、相続がスムーズに進められないこともあります。
不動産を分割せずに所有するためには、「共有名義」にする必要があります。
共有名義とは、複数人間で不動産の所有持分を決めて登記を行う方法です。
たとえば、土地を4人の子供で共有名義とした場合、
所有持分を1人当たり1/4と設定して登記を行います。
共有名義で遺産を相続することで、相続に際する不公平を限りなくゼロにすることができる
メリットがある一方で、管理・利用・処分の方法で揉めてしまう可能性あります。
売却等をする場合には、共有名義人全員の同意が必要となります。
修繕や賃貸なども、単独での判断ではできません。
売却等ができず、次世代・次々世代へと枝分かれしていくにつれて、
共有不動産がトラブルにつながる確率はより高まっていくことになるので
デメリットとリスクが大きくおすすめできません。
不動産のまま相続を行う場合は相続人が争う可能性がないよう慎重に検討する必要があります。
☆トクするポイント
①固定資産税が複数年に渡り無駄払いとなる
②今後不動産価値が値下がりする市場環境にある
③資産の組み換え(賃貸・新NISA等)をしたほうが有利になる
④相続人の権利関係が複雑になることが予想される
これらのケースに該当する場合、リスク回避のために事前に
不動産の資産整理を行っておいた方が、金銭的負担を軽減できる可能性があります。
どちらが有利になるかは、家族のご状況、物件の個別性によって異なります。
信頼できる不動産会社とご相談の上、シミュレーションを行い、
売却のタイミングと方法を選択することが重要です。
当社について
また、当社の代表(藤田)は久喜市空家等対策協議会の委員(2020-2024)も務めており、空き家問題に精通しておりますので、どんな物件でも安心してご相談ください。
記事を書いた人
経営企画室 上席相談員
鵜殿隆太朗(うどの りゅうたろう)
不動産取引・建築・資産活用のスペシャリストとしてご相談に乗らせていただきます。
ご事情やご要望をお聞かせいただき、一緒に満足のいく解決策を考えていけたらと思います。
(保有資格)
宅地建物取引士
ビル経営管理士
1級建築施工管理技士
1種証券外務員
1級リフォームスタイリスト
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
2級福祉住環境コーディネーター
賃貸住宅メンテナンス主任者