2024年6月21日 埼東よみうり掲載
不動産の相続に事前準備が必要?
不動産相続が発生した際、3年以内に売却したほうが有利になる法律を知っていますか?
例えば居住用財産を売却するとき、要件を満たしていれば譲渡所得の3,000万円の控除を受けられます。相続時に活用すれば税金の負担を大きく減らせる制度です。要件が細かく決まっているため、早めの確認をお奨めします。適用期間が定められているため、相続した不動産の処分を後回しにして放置していると損をするかもしれません。売却をするのか、賃貸や居住用として活用するのか、様々な選択肢がありますが、いずれにしても早期の検討が必要でしょう。
3000万円控除について
相続によって取得した空き家を、一人暮らしだった被相続人が死亡した日以後3年を経過した日の属する年の12月31日までに譲渡したときは、その空き家を譲渡して得た利益から3,000万円を控除できます。但し、令和6年1月1日以後の譲渡から、家屋や土地を取得した相続人が3人以上の場合の特別控除は2,000万円となります。
この控除を適用するための条件について解説します。
相続物件が被相続人の単独所有であることが大前提となっており、仮に登記がなくても被相続人以外に居住をしている方がいらっしゃった場合は対象外になります。
② 被相続人が一人暮らしであること
この特例は空き家をなくすことを目的にしていますので、被相続人が亡くなられた時点で一人暮らしの場合に限られます。被相続人に同居者がいなかった場合に限り、亡くなられた方が住んでいた空き家とその敷地を相続された方が売却して得た利益から3,000万円の特別控除が認められます。
③ 昭和56年 5月31日以前に建築された建物であること
対象は、被相続人の居住の用に供していた「昭和56年5月31日以前に建築された建物とその敷地」に限られます。
④ 相続から譲渡まで引き続き空き家でなければならない
相続した後、その家や家を取り壊した後の土地を事業の用、貸付けの用又は居住の用に供した場合には、この特例は適用できません。あくまでも相続から譲渡まで引き続き空き家でなければなりません。
⑤ 老人ホーム等への入居者も適用対象に
平成31年度税制改正により、次に掲げる要件を満たす場合に限り、相続の開始の直前において引き続きその被相続人の居住の用に供されていたものとして、本特例を適用できることとなりました。
イ 被相続人が老人ホーム等に入所をした時点において要介護認定等を受け、かつ相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと。
ロ 被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、その家屋について、その方による一定の使用がなされ、かつ、事業の用、貸付けの用又はその方以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。
⑥ 買主が耐震改修や建物の除却等を行っても適用対象に
令和6年1月1日以後の譲渡から、売買契約等に基づいて、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修又は除却の工事を行った場合、工事の実施が譲渡後であっても適用対象となります。
相続税取得費加算について
相続不動産を相続税申告期限以後3年以内に譲渡した場合、取得費に一定の相続税額を加算して、譲渡所得税を軽減できます。実質的に相続税の減税になるのは大きなメリットです。
土地や建物などを売却して譲渡所得を得たときは、確定申告をし、必要に応じて所得税(いわゆる譲渡所得税)や住民税を納めなければなりません。譲渡所得を計算する際は、財産の売却で得た対価の額(収入金額)から、財産を取得するためにかかった費用を差し引きます。
取得費加算の特例を適用すると、相続税額をもとに計算した一定金額を取得費に加えられます。その結果、譲渡所得金額が減り、税負担を抑えられる仕組みです。つまり、短期間で相続税と譲渡所得税を納めることになった人の税負担を軽減することを目的としています。
取得費加算の特例を受けるための要件は、以下の3つです。
① 相続または遺贈で財産を取得している
取得費加算の特例の対象となるのは、亡くなった人(被相続人)から相続や遺贈(遺言書による指定によって、財産を無償で引き継ぐこと)によって取得した財産です。
遺贈であれば、相続人以外の人にも財産を引き継ぐことができ、その財産を売却したときに他の要件を満たしていれば取得費加算の特例の適用をできます。
② 財産の取得者に相続税が課税されている
取得費加算の特例は、納めた相続税額のうち売却した財産に対応する金額を取得費に加算して、譲渡所得金額を算出する制度です。そのため、取得費加算の特例を利用するためには、財産を取得したときに相続税を納めていなければなりません。相続や遺贈で取得した財産を売却したとしても、相続税を支払っていないのであれば、取得費加算の特例は対象外となります。
③ 相続開始から3年10ヶ月以内に売却している
取得費加算の特例を適用するためには、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日までに財産を譲渡しなければなりません。相続税の申告期限は、相続開始日の翌日から10ヶ月以内であるため、特例の適用期限は相続開始の翌日から3年10ヶ月以内となります。
取得費加算の計算方法
相続税額×譲渡財産の相続税評価額/(相続税課税価格+債務控除額)=取得費加算額
となります。
例えば、
相続税額:2000万円
譲渡した財産の相続税評価額:1憶円
相続税課税価格+債務控除額:2憶円
とした場合、取得費加算額は
2000万円×1憶円/2憶円=1000万円
となります。
資産防衛のポイントまとめ
不動産相続トラブルになるケースの多くは「相続が終わったら考えます」という方です。限られた期限内に有利な制度を活用するためにも、不動産の今後は早めに決めておくことをお勧めします。当社は200名を超える大家さんから賃貸管理をお任せ頂いておりますが、上手にやっている方は、事前に相談しながら進めています。詳細はお問合せください。
当社について
また、当社の代表(藤田)は久喜市空家等対策協議会の委員(2020-2024)も務めており、空き家問題に精通しておりますので、どんな物件でも安心してご相談ください。
記事を書いた人
経営企画室 上席相談員
鵜殿隆太朗(うどの りゅうたろう) 34歳
不動産取引・建築・資産活用のスペシャリストとしてご相談に乗らせていただきます。
ご事情やご要望をお聞かせいただき、一緒に満足のいく解決策を考えていけたらと思います。
(保有資格)
宅地建物取引士
ビル経営管理士
1級建築施工管理技士
1種証券外務員
1級リフォームスタイリスト
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
2級福祉住環境コーディネーター
賃貸住宅メンテナンス主任者