秋のとある午前中、久喜市菖蒲町上栢間の田園風景の中にひっそりと佇む大きな森を発見。さっそく足を運んでみました。

のどかな町に広がる神秘の鎮守の森

こちらは神明神社の一の鳥居。そこから始まる500mもの参道は、木々がトンネルを作り、先が見えないほどの奥深さ。まるで異世界への入り口のような雰囲気です。

この森は、昭和52年3月29日に埼玉県指定天然記念物に登録されました。
参道や境内を含む林は1.74ヘクタールもの広さを誇ります。

いよいよ、ここから異世界へと続く…?

四季折々の魅力があふれる森。バードウォッチングもおすすめ

鳥居をくぐり参道に入ると、驚くほど多くの鳥のさえずりが耳に飛び込んできます。まるで鳥たちの世界に迷い込んだような感覚です。

雨上がりのひんやりした空気が心地よく、参道の終わりはまだ遠く。道中では多種多様な木々が迎えてくれます。

ムクノキやヒサカキ、ケヤキなど、ここでしか見られない貴重な植生が多く、自生する木々の種類の豊富さに驚かされます。

埼玉県東部でこれほど広域的な林は非常に珍しく、氷川神社に次ぐ長さを誇る社叢としても有名です。宮司さんによると、管理の丁寧さから見てもトップクラスの価値があるとのこと。

そして、埼玉県内で社叢の長さが1番長いのは、
大宮の氷川神社で、それに次いで神明神社の
社叢は2番目に長いそうです。
ただ、これだけしっかり木々を管理し
守れているという観点からすると、
一番に匹敵するのではないかと、宮司さんが
教えてくださいました。

森を抜けてたどり着く神聖な空間

そしてようやく参道の終点、鳥居と拝殿が見えてきました!

参道の先には拝殿があり、うっそうと生い茂る木々に囲まれた神聖な空間が広がっています。この場所に足を踏み入れると、心が洗われるような清々しさを感じました。

神明神社の創建は景行天皇(第12代天皇)の時代とされ、天照皇大神(アマテラスオオミカミ)と豊宇気毘売神(トヨウケビメノカミ)が祀られています。明治以降は村社、郷社、そして県社へと昇格し、現在の名が定着しました。

手水舎や本殿の細やかな彫刻は見ごたえがあり、訪れる人を魅了します。
この彫刻だけでも見る価値あり。

神明神社の拝殿が見えてきました。いよいよ参拝です!

お社の周囲は、たくさんの木々に囲まれた静寂の空間。自然の豊かさに心が癒されます。

参拝を済ませた後、宮司さんの案内で拝殿の奥へと足を運びました。

神様が祀られている本殿。
写真正面には「豊宇気毘売神」が祀られています。

ぐるっと回って、手前には「天照皇大神」が祀られている本殿。

神社建築でよく見られる、屋根の両端にV字形で突き出した柱は「千木(ちぎ)」と呼ばれます。この千木は、祀られている神様の性別によって先端の切り口が異なるのが特徴です。

女性の神様の場合、千木の先端は地面と平行になったフラットな形状になっており、男性の神様の場合は地面に対して直角の鋭利な形状になるそうです。

また、千木の間に平行に並ぶ「鰹木(かつおぎ)」と呼ばれる柱も特徴的で、女性の神様は偶数、男性の神様は奇数で配置されているとのことです。

ここでは、天照皇大神が女性の神様であるため、千木の先端がフラットで、鰹木は6本配置されています。一方、豊宇気毘売神は男性の神様(諸説あり)とされ、千木の先端は鋭利で、鰹木は5本配置されていました。

ここでは毎年、2月14日前後の日曜日に火除け(防火・防災)祈願の「鎮火祭」が行われます。

また、かつては豊凶を占う「筒粥(つつがゆ)」もおこなわれていたそうですが、現在はお休み中とのことです。

そのほか、4月には春祭、7月には献灯祭、11月には新嘗祭が開催されます。

少し境内を散策してみましょう。

拝殿の手前右手に神楽殿があります。

神楽殿の傍にはとても大きく立派なクスノキが。

森の奥へ進んでいくと、三嶽山神社があります。

三嶽神社の奥、森の終わり辺りに八幡神社があります。

境内をのんびり散策していると、とにかくたくさんの種類の木があり、いろいろな大きさや形の実が落ちていました。

落ちた実が育ち、まだ小さくて元気な木を見つけなんだかほっこりした気分になりました。

参道の森を通りリフレッシュして、新たな日常を♪

人は生まれた時、穢れがないと言われています。しかし、生きていく中で、どうしても穢れを受けてしまいます。神社へ向かう参道は、その穢れを落としてくれる場所だそうです。そして、参拝を通じて穢れを祓い、新たな日常を迎えることができるというお話を、宮司さんから伺いました。

帰りの参道。あの光の先が現実の世界だと思うほど、この森の中は居心地の良い空間でした。

この木々や貴重な自然は、宮司さんとその奥様、そしてご近所の方々によって大切に守られています。参道に溜まる枯葉や枯れ枝をこまめに掃除されており、とても手入れの行き届いた神社でした。しかし、広大な森のため、この手入れには相当なご苦労があることと思います。

参拝の際は、ぜひゴミを持ち帰り、マナーを守って、木々や鳥たちとともに自然をのんびり楽しんでいただければと思います。


神明神社
住所:埼玉県久喜市菖蒲町上栢間3366
交通:JR東北本線、東部伊勢崎線「久喜駅」より車で約25分
TEL:なし
営業時間:なし
定休日:なし
駐車場:参道入り口にある鎮守の森公園の駐車場