不動産所有権移転登記の費用や必要書類、手続き方法を解説
不動産所有権移転登記とは、不動産の所有者が変更になったことを法的に記録する手続きであり、売買・相続・贈与など不動産の取得にともなって必ず行う必要があります。
この登記を行わなければ、たとえ実際に所有していても、第三者に対してその権利を主張できなくなってしまうおそれがあります。
また、2024年4月からは相続登記が義務化されるなど、法制度も大きく変化しています。手続きを怠ると過料の対象となるケースもあるため、正確な知識が求められます。 本記事では、不動産所有権移転登記の費用や必要書類、手続きの流れ、ケース別の注意点について、初めての方にもわかりやすく解説します。
不動産所有権移転登記とは
「不動産所有権移転登記」とは、土地や建物の所有者が変更された際に、その変更を法務局の登記簿に記録する手続きです。
不動産の権利関係を公的に証明するためのものであり、登記が完了していなければ、新しい所有者であることを法的に主張できません。
たとえば中古住宅を購入した場合、売買契約書だけでは所有権の移転を証明できません。
正式に登記を行って初めて、新しい所有者としての権利が守られることになります。
所有権移転登記は不動産取引における重要なステップであり、正しく手続きを行わないと、将来的に所有権を巡るトラブルに発展する可能性があります。
そのため、不動産を取得した際にはできるだけ早めに登記を行うことをおすすめします。
不動産所有権移転登記を行うタイミング
所有権移転登記が必要となるタイミングは、いくつかあります。
代表的なのは「売買」「相続」「贈与」「離婚による財産分与」などのケースです。それぞれの場合に応じて、必要書類や手続きの進め方が異なります。
不動産売買した場合
住宅や土地の売買においては、所有者が売主から買主へと移るため、所有権移転登記が必要です。
通常、売買契約を締結してから物件の引き渡し日までに、司法書士が登記手続きを代行することが一般的です。
この登記を行わずに放置すると、所有権を第三者に主張できない恐れがあり、万が一売主が二重売買を行った場合などには、トラブルになる可能性もあります。
そのため、不動産の引き渡しと同時に所有権移転登記を済ませることが重要です。
・新築マンションや注文住宅の場合
新築マンションや注文住宅を購入した場合も、所有権の保存登記とあわせて、売主から買主への所有権移転登記が必要です。
特に注文住宅では、建物の建築完了後に「建物表題登記(表示登記)」を行ったうえで、所有権の保存登記と移転登記を行います。これらの登記は一連の流れで司法書士や土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
また、新築マンションはディベロッパーが一括して表示登記を済ませておくケースが多いため、購入者は引き渡し時に移転登記のみ行えばよいこともあります。
・中古マンションや一戸建ての場合
中古不動産の売買では、既に登記されている物件に対して、現在の登記名義人から買主へ所有権を移転する登記を行います。
登記簿の記載内容に不備があると手続きが遅れる可能性もあるため、事前に司法書士による調査を受けることが推奨されます。
特に相続や離婚などが絡んで登記が未整備な物件の場合、売主側で所有権の整理が必要なケースもあり、引き渡しまでに時間がかかることがあります。
不動産を相続した場合
被相続人から不動産を引き継ぐ場合は、「相続登記」と呼ばれる所有権移転手続きが必要です。
2024年4月からは、相続を知った日から「3年以内の登記申請」が義務化されました。
期限を過ぎると、10万円以下の過料が科される可能性もあるため、できるだけ早めに手続きを進めましょう。
相続によって取得した不動産は、遺言書の内容や相続人間の遺産分割協議に基づいて所有者を確定させたうえで、法務局に登記申請を行う必要があります。
また、所有者が不明な土地や建物が全国的に増えていることが、防災対策や公共インフラ整備を妨げる深刻な社会問題となっており、こうした背景からも相続登記の義務化が進められました。
この制度により、今後は「不動産の所有者情報を正確に管理する」ことが社会的にも強く求められています。
相続登記を怠ると、将来的に不動産の売却・活用ができなくなる可能性もあるため、忘れずに対応しましょう。
出典:法務局「不動産を相続した方へ~相続登記・遺産分割を進めましょう~」
離婚で財産分与をする場合
離婚により夫婦が不動産を分け合う場合、共有名義の不動産を一方の単独名義に変更するケースがよくあります。
このような持分変更も、所有権移転登記が必要となります。
協議がまとまっていても、時間が経過すると名義変更に相手が応じない事態も起こり得ます。
離婚が成立したら、速やかに財産分与の内容を明記した合意書などを基に登記を行うことが望ましいでしょう。
不動産所有権移転登記の費用と計算方法
所有権移転登記を行う際には、3つの費用が発生します。
- 登録免許税 (国に支払う税金)
- 司法書士報酬 (依頼した場合)
- 手続きにかかる実費 (郵送費や書類取得費など)
登記にかかる費用は不動産の種類や移転理由によって異なり、全体の金額も大きく異なってきます。
計算方法と費用を順にみていきましょう。
登録免許税の計算方法「固定資産税評価額 × 税率」
登録免許税は、法務局で登記を行う際にかかる国税です。
税額は「固定資産税評価額 × 所定の税率」で計算され、移転理由によって税率が変動します。
たとえば、売買による所有権移転では通常2%の税率が適用されますが、一定の条件下では軽減措置として1.5%になることもあります。相続の場合は0.4%、贈与では2%が基本となります。
例)
固定資産税評価額1,000万円の土地を相続した場合
- 固定資産税評価額:1,000万円
- 税率: 0.4%
- 登録免許税の計算:1,000万円 × 0.4% = 40,000円
司法書士報酬の相場目安
登記手続きを司法書士に依頼する場合、その報酬も必要になります。
一般的な相場は、不動産1件につき3万円~5万円前後が目安です。
相続や共有名義の変更など、手続きが複雑になるケースでは報酬が高くなる傾向があります。事前に見積もりを取り、費用感を確認することが大切です。
手続きの実費の目安
手続きには、収入印紙代、戸籍謄本や住民票などの取得費用、書類郵送のための切手代や交通費などの実費もかかります。
こうした費用の目安は、全体で1万円~2万円程度です。
細かな項目が多いため、あらかじめ何が必要かを確認して準備しておくと、手続きがスムーズに進みます。
不動産所有権移転登記の費用を節約する方法
所有権移転登記には、登録免許税や書類取得費用に加え、司法書士に依頼する場合は報酬も必要となります。
総額で数十万円になることもありますが、工夫次第で費用を抑えることは可能です。
ここでは、登記費用を節約するための具体的な方法を紹介します。
自分で手続きを行う
司法書士に依頼せず、自分で登記手続きを行うことも可能です。
手続きを自ら行えば、報酬分の数万円~十数万円を節約することができます。
「贈与」や「相続」といった近親者間での登記については、必要書類や申請書のサンプルが法務局や各種書籍・サイトで公開されており、比較的自分で手続きを進めやすい点も魅力です。
近年では、オンラインでの登記申請にも対応しており、自宅にいながら登記申請を行うことができます。法務局のサポートを活用すれば、初心者でも対応できるでしょう。
自分でオンライン登記を行う場合、手順は以下のようになります。
<オンライン登記申請の流れ(不動産登記)>
- 法務省のWebサイトから「申請用総合ソフト」をダウンロード
- 申請情報を作成する
・申請書様式を選択して、登記目的や当事者情報などを入力
・申請人または代理人による電子署名を付与 - 添付書類(添付情報)を用意する
・PDF形式の必要書類(住民票、固定資産評価証明書など)を作成
・一部添付書類にも電子署名が必要
・電子ファイルで送信できない書類は、郵送または持参(「特例方式」)で提出 - 申請情報と添付情報を送信
・「申請用総合ソフト」から登記・供託オンライン申請システムへ送信 - 登録免許税の納付
・電子納付(ネットバンキング等)
・現金納付(税務署で納付し、領収証を提出)
・収入印紙による納付
※オンライン申請の受付時間は、平日8:30~21:00までです。
参考:法務省「不動産登記の電子申請(オンライン申請)について」
見積は複数とる
司法書士に依頼する場合は、必ず複数の事務所から見積を取りましょう。
同じ内容の手続きでも、報酬額には差が出ることがあります。
インターネットや口コミを活用して地域の司法書士を探し、料金体系を比較するのがコツです。
また、不動産会社を通じて紹介される司法書士は、利便性の反面、料金が高めな場合もあります。紹介された事務所に決める前に、自分で直接探してみるのも一つの手段です。
経費を計上する
不動産を投資目的で取得する場合、登記費用は経費として計上できるケースがあります。
具体的には、司法書士報酬や登録免許税がこれに該当します。
確定申告時に経費として処理すれば、課税所得を減らし、節税につなげることができます。
ただし、居住用として購入した物件では、原則としてこれらの費用は経費になりません。 事前に経費計上が可能かどうか、税理士など専門家に確認しておくと安心でしょう。
不動産所有権移転登記の必要書類
所有権移転登記を行う際には、事前に必要な書類をそろえておきます。
手続きの内容や移転の原因(売買・相続・贈与など)により求められる書類が異なるので、行う手続きごとに何が必要なのかを確認してから、準備を進めましょう。
全てのケースで必要な書類
どのような理由で所有権が移転する場合でも、共通して求められる書類は下記の6点です。
- 登記申請書
- 登記原因証明情報(売買契約書や遺産分割協議書など)
- 登記識別情報(旧権利証)
- 固定資産評価証明書
- 印鑑証明書(売主・贈与者・相続人など)
- 代理人による申請の場合は委任状
これらの書類は不備があると登記が受理されません。 必要に応じて市役所や法務局で早めに取得し、内容を確認しておきましょう。
売主・贈与者が必要な書類
売主または贈与者に求められる書類
- 印鑑証明書(3か月以内のもの)
- 登記識別情報(または権利証)
- 本人確認書類(免許証など)
これに加えて、贈与の場合は「贈与契約書」、売買の場合は「売買契約書」が必要になります。
買主・贈与受贈者が必要な書類
買主または贈与を受ける側も、以下のような書類を提出する必要があります。
- 住民票(住所移転をともなう場合)
- 本人確認書類
- 印鑑証明書(必要に応じて)
- 代理申請の場合は委任状
買主がローンを組んで購入する場合には、金融機関からの書類も別途必要です。
相続する場合の必要書類
相続により所有権を移転する場合は、以下の書類を準備する必要があります。
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺産分割協議書(協議がある場合)
- 相続人の住民票
- 固定資産評価証明書
相続人が複数いる場合や、不動産が複数ある場合は、整理に時間がかかることもあります。早めの準備を心がけ、期間内に手続きを完了できるよう進めていきましょう。
不動産所有権移転登記の手続き方法
所有権移転登記の手続きは、大きく3つのステップに分かれます。
事前準備から法務局への提出、登記完了までの流れを順に説明していきます。
STEP1: 書類の作成・準備
最初のステップは、必要な書類の準備と登記申請書の作成です。
登記申請書には「登記の目的」「登記原因」「登記義務者・権利者」などを記載する必要があり、不備があると申請が受理されません。
申請書は手書きでも作成できますが、法務局のウェブサイトにある「登記・供託オンライン申請システム」を利用すれば、入力フォームに従って作成できます。
STEP2: 法務局への提出
書類がそろったら、法務局へ申請します。
提出方法は3通りです。
- 窓口へ直接提出
- 郵送による申請
- オンラインによる申請(登記ねっと・供託ねっと)
オンライン申請であっても、書類の一部は郵送や持参が必要な場合もあるため、事前に確認しておくことが大切です。
なお、申請先の法務局は、登記する不動産の所在地を管轄する法務局となります。
STEP3: 審査と受け取り
法務局に申請が受理されると、登記内容の審査が行われます。
通常は1週間前後で登記が完了し、「登記完了証」や「登記識別情報通知書」が交付されます。
審査中に不備が見つかると、補正を求められることがあります。
補正には期限があるため、連絡があった場合は速やかに対応しましょう。
まとめ
不動産所有権移転登記は、不動産の権利関係を法的に明確にするためにも重要なステップです。
不動産売買など取得理由によって必要な書類や流れが異なりますので、しっかりと確認し期日までに完了できるよう進めていきましょう。
相続、贈与といった理由の場合は、自分で比較的簡単に手続きを行うことも可能です。
また、登記を怠るとトラブルや過料の対象となる可能性があるため、不動産を取得した際は不動産所有権移転登記を早めに済ませましょう。
この記事で紹介したポイントを参考に、手続きの内容をしっかり把握し、必要に応じて司法書士などの専門家にも相談しながら、確実かつスムーズに登記を進めてください。
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