広域化は断念する。
これは2019年3月11日開催の全員協議会(※)の席上で表明された久喜市長の言葉です。
議題の中心は ごみ処理施設に関する新事業計画でした。
「断念」の言葉に、無念な想いがにじみます。
8か月もの間、紛糾していた当議案を、今回すまいの相談窓口infoではクローズアップして解説します。
※全員協議会・・・市議会議員全員出席の会議

ごみ処理の ”広域化” 計画が争点に

ごみ処理事業の運営方針で2案が対立

長期間続くこととなった今回の議論は、ゴミ処理事業を、他市町から「ゴミ」を受け入れる「広域化」に改めるか、従来どおり「久喜市・宮代町」に限定するかが争点になりました。
元々、従来どおりの当初計画があったなか、幸手市・杉戸町からの「ごみの受け入れ」要請が入ったことで、前・田中市長の計画を一旦棚上げし、新案「広域化」の検討を進めることとなりました。

広域化が久喜市に与えるメリット

他市町からの「ごみの受け入れ」要請を受けた梅田市長は、
「30年後、50年後の久喜市の将来を見据えた場合、人口減少社会の到来を踏まえると、これまでのような1つの市町村があらゆる行政サービスを提供するという発想を転換して、近隣自治体同士が連携して行政運営を行っていく必要がある。」
との考えから、広域化事業の検討を指示しました。
市長からは「広域化」に関して次のメリットが説明されています。

・久喜市の事業費負担の削減
・ごみ処理施設の規模を拡大することで回収されるエネルギーが増量する
・歳入が確保できる点(ゴミの受け入れ事業で、他市から使用料が入る)
削減額は、38億円から40億円との大きな試算が出ていました。
建設費142億円と言われる新ごみ処理施設ですから、約3割の費用が削減できれば、それは大きな節約につながります。

建設予定地 地域住民の不安

突然にも思える再検討で、地域住民の方々は当然のように戸惑い、不安に感じたことでしょう。議会が紛糾した流れは、当事者となった建設予定地に住む方々の心情を考えれば当然と思えます。
なにしろ現在3拠点に分かれているごみ処理施設が1か所になるだけで終わらず、さらに多くの市町のごみを受け入れるのですから、ゴミ収集車が驚くほど集まり、道路に行列を作るのではないか、排ガス等で生活環境が変わってしまうのではないか。
当事者ならもっと具体的な想像がはたらくはずです。

広域化から、現状維持案へ

さて、ごみ処理事業案の対立は、3月11日開催の「全員協議会(市議会議員全員出席の会議)」の席上で、結末に向けて大きく動きました。
冒頭にお伝えした、梅田修一・久喜市長が「広域化は断念する」と表明されたのです。
第一の理由は、建設予定地となった向野(むかいの)地区の賛同が得られなかったこと。そして、現状すでに竣工30年を越えている、ごみ処理施設の老朽化が急務であることが挙げられました。
議論の末に広域化案は退けられ、当初案の久喜市+宮代町での事業計画が正式に確定しました。

1年遅れで着工。稼働は2024年度予定

新たな処理施設は菖蒲地区に

事態の沈静化を迎え、新たに建設されるごみ処理施設は、当初原案を踏まえて菖蒲地区への建設が予定されています。
計画より1年遅れで、着工は2022年度、稼働は2024年度の予定となりました。
前市長在職時に決定された計画が元になり、市内「久喜宮代」「八甫」「菖蒲」の3清掃センターを1つに統合する予定です。処理施設は、現在稼働中の菖蒲清掃センターの敷地を含んだ形で、約142億円強をかけて新しく建設するとのこと。
当初予定では、2023年度に稼働予定でしたので、計画は1年遅れになりました。
担当である、野川和男・ごみ処理推進課長は「2024年度中の稼働に向けて整備基本計画を今後作る」と語っています。

身近なところでは、新しい処理場が稼働してからの「ゴミの収集日」や「ゴミの分別」・「粗大ごみの収集方法」の変化が気になりますよね。
まだ先の話ではありますが、今後も市政に注目しながら、生活につながる話題をお届けしていきたいと思います。
以上、すまいの相談窓口info編集部でした。
参考:農時新聞2019年5月5日付記事より