久喜駅から少し歩いた住宅街にひっそりと佇む蕎麦屋「二八そば砂場」。店名にはどこか風格を感じさせる響きがあります。夫婦二人で営むこのお店は、車でも訪れやすいよう駐車場も完備されており、地元住民からも親しまれている一軒です。

お店に近づくと、まず目を引くのは堂々とした和風の外観。しっかりとした木造の建物は、周囲の住宅街の中でひときわ目を引く存在感があります。道沿いには黒板が立てかけられており、そこには所狭しとメニューが手書きで並べられていました。

文字ひとつひとつからは手作りの温かみが感じられ、「今日はどれを頼もうか」と思わず期待が高まります。車で通りがかったとしても、ふと足を止めたくなるような魅力が漂っていました。

古風で温もりが広がる店内

暖簾をくぐると、店内は落ち着いた和の空間が広がります。テーブル席と畳席が用意されており、それぞれがゆったりとした広さで配置されています。特に畳席では、足を伸ばしてくつろぐことができるため、どんな世代のお客さんでも居心地よく過ごせるよう配慮が感じられます。

席に着くと、奥から気さくなおかみさんが挨拶に出てきてくれました。どこか懐かしさを感じさせるその笑顔に、緊張がすっと和らぎます。

取材のお願いをすると、「地元の方向けのメディアならぜひ」と快く引き受けてくださったおかみさん。話す声の柔らかさや所作の丁寧さからは、長年お店を守ってきた自信と誇りがにじみ出ていました。

スタンダードなもりそばを注文

その日はシンプルに「もりそば」を注文しました。注文を告げると、おかみさんが「夫婦ふたりでやっているもんで、お時間をいただきます」と一言。

調理の手間をかけた一皿を提供するためのこだわりが感じられる言葉です。この一言のおかげで、待ち時間もせかせかとせず、逆にリラックスした気分で待つことができました。

待っている間にも常連らしきお客さんが次々に入店します。おかみさんや店主と交わす親しげなやり取りから、この店が地元に根ざし、人々の日常に溶け込んでいる様子が伝わってきます。中には、40年近く通い続けているという方もいるとのことで、まさに「地域に愛される店」という表現がぴったりです。

ほどなくして運ばれてきた「もりそば」は、見た瞬間に特徴が分かる一品。一般的な蕎麦よりもやや太めの麺は、見た目にも迫力があり、食べ応えへの期待感を高めます。一口すすってみると、その食感はもっちりとしており、まるでうどんのような弾力。しかしながら、味わいは蕎麦特有の香りがふんわりと広がり、太さからは想像できない軽やかさがあります。この絶妙なバランスが、この店の蕎麦を特別なものにしているのだと感じました。

つゆは、だしがしっかりと効いており、蕎麦との相性は抜群。食べ進めるごとに、だしの旨みが口の中に広がり、最後の一口まで飽きることなく楽しめます。

締めに提供される蕎麦湯をつゆと混ぜて飲むと、これがまた格別。食後の余韻を静かに味わいながら、「また来たい」という気持ちが自然と湧いてきました。

夫婦で営んで45年の老舗

「二八そば砂場」という名前には、長い歴史が込められています。おかみさんによれば、その由来は大阪城を築城する際に使われた、砂置き場近くの蕎麦屋から暖簾分けを受けたことに始まるのだとか。その伝統を受け継ぎ、この地で店を構えてからは45年。ご夫婦二人三脚で営んできたというから驚きです。

こうした背景を聞くと、ただおいしい蕎麦を食べるだけでなく、この店が背負う歴史や地域との結びつきをも味わっているような気持ちになります。伝統を守りながらも、地元の人々の生活に寄り添い続けてきた「二八そば砂場」。その味わいには、単なる食事以上の感動が詰まっています。

久喜の住宅街の中で、静かにその存在感を放つ「二八そば砂場」。ここで味わう蕎麦は、単なる料理ではなく、地域と人々を結びつける一つの象徴のようにも感じられます。地元の常連さんはもちろん、ふらりと立ち寄った新しいお客さんも温かく迎え入れるこの店は、久喜という街そのものの魅力を体現しているようです。

みなさんも、お近くに寄られた際はぜひこの店を訪れてみてください。


二八そば砂場
住所:埼玉県久喜市本町4-4-1
アクセス:JR東北本線東武伊勢崎線「久喜駅」から徒歩で約22分
電話:0480-23-2688
営業時間:11:00-21:00
定休日:火曜定休