「梨」は久喜市の代表的な農産物で、埼玉県内随一の栽培面積・収穫量とされています。

地元の農家の皆さんが手間をかけ、大切に育てている久喜の梨。

そんな甘くておいしい梨は、地元の農産直売所で販売されるほか、県内外へ出荷されて、皆さんに広く楽しまれています。

まだまだ埼玉県民に知られていない、久喜の梨の素晴らしさを伝えるべく、「知って楽しい久喜」編集部では、久喜の梨について調査を行い、品種ごとの食べ比べレポートをすることに。

「久喜市の梨愛好会」結成です!

久喜で育てられている梨の種類

久喜市では幸水、彩玉、豊水、あきづき、新高の5種類が主に育てられているそうです。

それぞれどんな味の違いがあるのか、気になるところです・・・。

品種出荷時期
幸水(こうすい)8月上旬から8月中旬ごろ
彩玉(さいぎょく)8月下旬から9月上旬ごろ
豊水(ほうすい)8月下旬から9月中旬ごろ
あきづき9月上旬から9月中旬ごろ
新高(にいたか)9月下旬から10月中旬ごろ
※出荷時期は気象状況等により変動するようです。

久喜の梨の凄さと歴史

令和6年9月に行われた日本野菜ソムリエ協会主催の「第3回全国梨選手権」では、久喜市内にある「梨の大澤農園」が出品した「彩玉」が最高金賞に選ばれました。全国一位(最高金賞)の梨の生産地がまさか久喜だとは・・・まさに久喜の誇りです。(昨年は金賞だったので、今年はリベンジの最高金賞だったようです)

久喜は「埼玉梨の元祖」の地

ふるさと農園久喜には、「五十嵐翁報恩碑」があり、埼玉県東部地域に梨栽培を伝え広めた、五十嵐八五郎(はちごろう)の功績が称えられています。

碑文によれば、八五郎は安政元年(1854)に埼玉郡三箇(さんが)村(現久喜市菖蒲町三箇)で生まれ、千葉県や大里郡三ヶ尻(みかじり)村(現熊谷市)にて梨栽培を行いました。

明治13年には大里郡武川(たけかわ)村(現深谷市)に移り、梨栽培に専念し、技術をみがき、販売を行ったところ多くの収益を得ました。この有利な業を多くの人に伝えようと、同17年からは地元の三箇村、栢間(かやま)村、江面(えづら)村(いずれも現久喜市)、その他各村を回り、梨栽培の技術を伝えました。梨栽培を教わった者はいずれも結果良好で家産(かさん)を増やすことができたため、その子弟が五十嵐翁の徳に永久なる感謝を残すため、記念碑を建立し、五十嵐翁は「埼玉梨の元祖」と称されるようになりました。この石碑は、梨栽培の歴史を知る上で貴重な資料として、久喜市の市指定有形文化財となっています。

ふるさと農園久喜
〒346-0033 埼玉県久喜市下清久

埼玉県の代表種「長十郎」が発見されてから100年

菖蒲町には明治六七年ごろに埼玉県の代表種「長十郎」が発見されてから100年を記念した「しょうぶの梨百年記念碑」が建てられています。

碑文によると今から百年前に当たる明治26年頃には、埼玉県の代表種「長十郎」が発見され、久喜市においても有力な農業経営の軸となっていきました。

梨の栽培が久喜市で広く普及するようになったのは明治末期からで、1910年の四大水害の際に、田畑の被害に比べ、梨の被害が少なかったことから急速に広まっていったようです。 梨の歴史は農業の歴史でもあるのですね・・・!

しょうぶの梨百年記念園
〒346-0115 埼玉県久喜市菖蒲町小林 県道5号

久喜の美味しい梨を探す旅

埼玉東部に梨を広めた方は久喜市出身だったということや、水害によって梨の栽培が広まったことなど、埼玉県内において、久喜が梨文化の中心となっている背景がわかったところで・・・

ちょうど8月9月は梨の季節!

久喜の美味しい梨を食べずに秋を迎えることはできないでしょう!

梨の食べ比べをしたい私たちは、さっそくそれぞれの品種を求めて直売所へ・・・
市内3カ所を巡り、やっとの思いで幸水、彩玉、豊水の3種類を購入できました。

久喜市梨組合除掘選果所
菖蒲グリーンセンター

各店舗によって、その日に入荷している品種が違うことにも驚きました。

菖蒲グリーンセンター

そしてポップからも店員さんのおススメ度が伝わります。ふむふむ、これは参考になる。

菖蒲グリーンセンター

久喜の梨を食べ比べ!それぞれ味の違いはあるのか!?

今回は、直売所で手に入れることができた「幸水」「彩玉」「豊水」を食べ比べします。(あきづきはもう少しで出荷開始だったそうです・・・)

「久喜市の梨愛好会」のメンバーに加え、久喜駅東口で飲食店(ビストロEMMA)を営む青山さん協力のもと、味比べを実施します。

包丁を入れた瞬間からあふれ出す梨汁・・・。味への期待が膨らみます。
皮をむく際に手に滴る果汁量を感じ、我々も涎が止まりません。(写真は幸水)

収穫時期が一番早い、水分量多くさっぱりとした「幸水」

まず、収穫時期が一番早い「幸水」からいただきます。

一口、パクッ!
口いっぱいに梨汁が広がります。まさに「幸せな水!」

とにかく水分量が多くジューシーなのですが、さっぱりとした、ほどよい甘さを感じることができました。

久喜市で出荷する梨の約半数を占める「幸水」は果肉はみずみずしく、歯ざわりは柔らかめですね。

「蚊取り線香をたきながら縁側で食べたい」「ジューシーさ溢れる幸水は部活終わりや仕事終わりなど疲れた日に食べたい」「一番バランスがいいのは幸水かも」との声がありました。

埼玉のブランド梨、大きさと濃厚な甘さがウリの「彩玉」

続いては彩玉です。

埼玉が誇るブランド梨の彩玉は、「あいつは、体が大きくて誰より甘いやつだ。」のキャッチコピーで知られています。先ほどの「第3回全国梨選手権」で最高金賞をとった梨も彩玉でしたね。

幸水と同様にジューシーですが、梨汁量は幸水よりやや少なめで、シャキッとした食感。
食感的にさっぱり系かと思いきや、彩玉は甘さが半端じゃない。やはり甘みは彩玉に軍配か。

もぐもぐタイム

「まさに梨界の王様。食後のデザートではこれを食べたい」「おやつもお菓子じゃなくてこれでいいよね」「玉もデカいからインパクトあって贈答品にも向いてる、絶対に喜ばれる」との声。

酸味と甘みのハーモニー。味の変化が楽しめる「豊水」

豊水は幸水に次ぐ出荷量を誇ります。

豊水をほおばると、幸水同様、口の中がみずみずしさで満たされます。「豊かな水」という名に相応しいジューシーさです。「水」シリーズは伊達じゃない。

食べた直後はほどよい酸味が感じられ、嚙んでいくと強い甘味に変化!まさに味のグラデーション!!

「そのまま食べるのももちろん美味しいけど、料理に使うなら豊水がいい」と話すのはビストロEMMAのオーナーシェフ青山さん。

ビストロEMMAの青山シェフ

「少し待ってて」と席を外して戻ってきたときに手にしていたのはこちら!

豊水にアールグレイとクリームチーズを和え、食べなれた梨がお洒落な前菜に大変身!

口の中には紅茶の香ばしさとチーズの酸味、そして豊水の甘みが広がり、デザート以外でもアレンジして楽しめることへの驚きがありました。

「生ハムメロン的な感じで、生ハムと梨を合わせてもいいかも」「うちの店でも久喜の梨を是非料理に使いたい」と話す青山さんでした。

以上、今回は「幸水」「彩玉」「豊水」の三種類を食べ比べしてみました!

どれも違ったおいしさがあって味の違いを楽しむことができました。皆さんもご自宅で久喜の梨食べ比べ大会を開催してみてはいかがでしょう?

今回食べられなかった「あきづき」や「新高」も楽しみですね!

「久喜市の梨愛好会」では、皆さんからの「梨を食べた感想」や「新たな梨情報」もお待ちしています!

一工夫で絶品 梨とアールグレイのマリネ

青山シェフにレシピを教えてもらいました。ご自宅でお試しください。

梨(豊水推奨)・・・1個
アールグレイ・・・乾燥茶葉 1/3
クリームチーズ・・・30g
はちみつ・・・適量
オリーブオイル・・・適量

①梨を洗い、皮をむく。1口大の大きさにカット
②ボールに写して、アールグレイの茶葉をまぶし、5分ほど冷蔵庫で休ませる
③器に盛って、クリームチーズを乗せる
④はちみつ、オリーブオイルを全体にかける
⑤お好みで、チャービルやミント等のハーブを添える

梨の甘みをより出したい場合は塩をひとつまみ入れるのもおススメ

青山シェフ、ご協力ありがとうございました! ビストロEMMAのHPはこちら